研究概要 |
音響外傷性難聴における内耳細胞死のメカニズムを詳細に解明し、その結果に基づき治療へのアプローチを多角的に検討することが本研究の目的である。 本年度は、糖尿病モデル動物(I型)を作製し、その聴力閾値・内耳形態の経時的な変化に加えて、音響曝露による影響を検討した。糖尿病モデル動物作製は、プライエル反射良好なC57B6/Jマウス(8週齢、オス)を用いた。ストレプトゾトシン(100mg/kg)を2日連日腹腔内投与し、I型糖尿病マウスを作製した。生食を腹腔内に投与したマウスをコントロール群とした。聴覚機能評価に関しては、2群のマウスに対して、ABR(Auditory Brainstem Response)にて聴覚閾値を測定した。baseline, 1,3,5ヶ月のタイムポイントで、4, 8, 16, 32kHzの4周波数を測定した。音響曝露は、糖尿病導入後6ヶ月経過したマウスと、同月齢のコントロールに4kHz, 105dBのオクターブバンドノイズを2時間曝露し、Temporary threshold shift (TTS)モデルを作製した。その後、音響曝露直前と、曝露後1,3,5,7,14日後にABRを測定した。内耳形態評価に関しては、各群とも1、3、6ヶ月の時点でABR測定後に断頭し中耳骨胞を摘出した。また音響曝露した群も、14日後のABR測定後に中耳骨胞を摘出した。固定、脱灰後にパラフィン包埋切片を作製し、HE染色にて内耳形態の評価をおこなった。音響曝露後の聴力回復は、糖尿病群で有意に障害されていた。糖尿病群の内耳ではコントロール群と比較し、コルチ器や血管条に光学顕微鏡上では形態に変化はみられなかったが、CD31による免疫染色では蝸牛軸の血管壁に有意な肥厚が観察された。
|