研究課題/領域番号 |
23592484
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
下郡 博明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70226273)
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キーワード | 前庭神経系 / 抗うつ薬 / CREB / BDNF |
研究概要 |
前年度に、抗うつ薬の慢性投与によって実際海馬領域で神経の可塑性のマーカーであるCREBのリン酸化を認めることが免疫組織学的に確認できた。本年度はCREBのリン酸化によって活性化されると言われている脳由来神経栄養因子(BDNF)が、実際に増加しているかどうかをmRNAを抽出してRT-PCRを用いて定量比較することを行った。塩酸セルトラリン含有飼料、あるいは通常飼料を1ヶ月摂取させたモルモットの海馬、前庭神経核、前庭神経節を摘出し、各々mRNAを抽出した。RT-PCRを行い定量化して塩酸セルトラリンの慢性摂取の有無での変化の有無を検討した。なお、塩酸セルトラリンの量は、通常人に投与可能な量をモルモットに換算してモルモットの1日飼料摂取量でその量が摂取できるように調整した。海馬領域では、塩酸セルトラリン含有飼料を慢性摂取することで有意にBDNF mRNAが増加した。前庭神経核、前庭神経節においては、通常飼料摂取モルモットでもBDNF mRNAは認めたが、塩酸セルトラリン含有飼料摂取によって有意に増加することは見られなかった。この度の研究では成熟モルモットの前庭神経核、前庭神経節においてBDNF mRNAを認めたことは意義があると考えた。前庭神経系の発達に必要なBDNFが成熟後もメッセージレベルでは存在していることは、前庭神経系が障害を受けた際には有効に作用する可能性がある。ただし、その発現量をCREB-BDNF系を活性化させると言われている抗うつ薬を用いて増加させる可能性はこの度は証明できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成熟モルモットの前庭神経核、前庭神経節にBDNFmRNAが存在することを確認したことは意義があると考える。また、人に投与可能な量の塩酸セルトラリンで海馬領域にBDNF mRNAのup-regulationを認めたこともひとつの知見である。
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今後の研究の推進方策 |
抗うつ薬慢性投与の有無によって、前庭障害後の回復過程、回復程度に差が生じる可能性を考え、今後解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
モルモット、塩酸セルトラリン、モルモット特殊飼料作成の購入に用いる。
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