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2012 年度 実施状況報告書

内耳感覚細胞の発生、分化と再生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23592485
研究機関香川大学

研究代表者

董 有毅  香川大学, 医学部, 助教 (90457341)

研究分担者 徳田 雅明  香川大学, 医学部, 教授 (10163974)
山口 文徳  香川大学, 医学部, 准教授 (40271085)
神鳥 和代  香川大学, 医学部, 助教 (40457338)
キーワードInner ear / Development
研究概要

内耳は聴覚と平衡感覚を受容する感覚器官である。内耳発生の過程では様々な遺伝子群の発現が見られるが、複雑な形態形成が正確に行われるためには、これらの遺伝子の発現の時間的空間的な制御が重要であると考えられる。内耳感覚上皮の発生についてこれまでに得られている知識はごくわずかなものである。
本研究で我々は、PTEN(Phosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10)が、マウス内耳の有毛細胞と感覚神経の分化の開始に特異的に発現が始まり、分化終了時には内有毛細胞と外有毛細胞と感覚神経では完全に消失することを発見した。PTEN hetero knock out +/- mice では有毛細胞の増殖異常が起り、不動毛の分化が悪くなった。これらの結果から、PTEN蛋白質が内耳の感覚細胞の分化のシグナルに関わる重要な蛋白質であることを報告した。内耳においては、未だ知られていない多彩なイオンチャネル、トランスポーター、ギャップ結合蛋白等のイオン輸送に密接に関連した機能性蛋白が豊富に発現している可能性が極めて大きい。内耳におけるカリウムイオン輸送機構および種々の難聴病態を解明し、更にその治療法を確立するためには、これらの遺伝子の内耳における発現様式を詳細に把握することが必要不可欠の要素となる。平成24年度の研究で、PTEN蛋白質が内耳のmarginal cells(E17)に発現が始まり、mature stage にはmarginal cellsにおける発現が消失するものの、interdental cells と root cells では引き続き陽性になることが明らかになった。これらのことから、PTEN蛋白質は内耳のgap junctionの発達中に役割を果たしていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

内耳は、聴覚とバランスを仲介する機械受容感覚器官のグループを含む、脊椎動物の中で最も精巧な組織形態の一つである。これらの器官は、空間に正確に配置され、感覚上皮を含む複雑なパターニングにより成立する。内耳の発達・分化においてはシグナル分子の関与が指摘されている。内耳の蝸牛にはギャッブ結合蛋白の一つであるコネキシン26が豊富に発現しているおり、内耳におけるカリウムイオンリサイクル機構に関与する(Kikuchi et al., 2000)。本研究では PTENが内耳の感覚細胞の分化の重要な蛋白質であり、内耳の非感覚細胞(marginal cells と interdental cells と root cells)gap junctionの発達にも役割を果たしていることを示したものである。この発現の報告は世界で初めてのものである。すなわちPTENの発現は、内耳におけるカリウムイオンリサイクル機構に寄与するものであることが想定された。我々はこれを土台として、内耳性難聴の病態の解明および治療への新たな展望が開いていく。臨床的観点から見ても、その意義は極めて大きいものと言える。今後PTEN とコネキシン26の相互作用のことをさらに調べる。

今後の研究の推進方策

本研究では感覚器官形成、なかでも耳をモデルシステムにして、この一連のステップを明らかにしたいと考えている。内耳は皮膚と共通の前駆組織から様々なシグナルを持続的に受け発生する。内耳感覚上皮の再生を実現し、感音難聴の根本的な治療を確立する一つの方法として、内耳感覚上皮の発生を再現する方法が考えられるが、その発生過程が詳細に解析されている網膜などと異なり、内耳感覚上皮の発生についてこれまでに得られている知識はごくわずかなものである。
本研究では、内耳感覚上皮の発生過程を分子レベルで完全に解明することにより、これまで困難とされてきた内耳感覚上皮の再生を実現することを目的とする。我々はこれまでの実験で、内耳の発生中のPTENの詳しい発現パターンを見つけ、PTENがマウスの内耳の有毛細胞の分化に役割を持つことを報告した。今後は、gap junctionの発達にPTENの発現がどのように関与しているかについて調べる必要がある。そのためには、PTENの上流と下流のシグナル伝達経路をめざし、どのような機能蛋白質がPTENと関連して動き、内耳の感覚細胞と非感覚細胞の発生、発達と分化を調節するかを詳細に調べる予定である。
研究の結果は国内会議、国際会議で発表し、国際ジャーナルで論文化することを準備している。

次年度の研究費の使用計画

PTENシグナリングなどの生化学的・免疫化学的分析のために抗体と化学試薬を買う予定している。研究のデータを国内および国際会議に参加発表するための旅費、ならびに論文として出版する費用に充てることを計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Role of PTEN in the development of inner ear2013

    • 著者名/発表者名
      Youyi Dong
    • 学会等名
      The 90th Annual Meeting of the Physiological Society of Japan
    • 発表場所
      Tokyo
    • 年月日
      20130327-20130329

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公開日: 2014-07-24  

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