ハイスピードカメラを用いたアブミ骨振動の動画撮像およびコンピューター解析を目的とした本研究において、平成25年度は以下の研究成果を得た。 ①24年度までの実験で、Tone burst音を用いた単一周波数音刺激により基本的なアブミ骨の運動性質については解析に成功していることを報告した。この実験系では断頭モデルのみならず、小動物用の全身麻酔装置を用いることにより、生体モデルにおいても音刺激の周波数と全く同一の周波数でのアブミ骨の上下運動を観察に成功しており、中耳伝音系が物理学的に忠実な運動モデルであることを証明している。今回、これらの実験系において複数個体間での評価および、中耳~内耳の破壊モデルと健常モデルとの評価を行った。解析ソフトウェアおよび解析手法の改善に伴い、コンピューター解析による波形解析のシグナルノイズ比および、周波数分別閾値は改善した。これにより、Tone burst音の刺激終了後の中耳伝音系の固有運動の解析において、同一個体において入力音刺激の周波数に関わらず、同一の固有振動を示すことを証明した。 ②さらに、同時に複数種類の周波数を入力することにより、周波数別でのアブミ骨振動の振幅比を検出した。この和音刺激の条件において、周波数別アブミ骨振動比は周波数の増大とともに減少傾向であり、レーザードップラーなどを用いた先攻研究と同様の結果をハイスピードカメラを用いて正確に再現することに成功した。
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