研究課題
中耳疾患では耳小骨が溶けると伝音難聴になる。また、中耳の骨破壊が進行すると、頭蓋底骨が欠損し髄膜炎のリスクが発生する。骨溶解のメカニズムは破骨細胞数の増加である。破骨細胞数はインターロイキン6などサイトカインによって増加することがわかっている。しかしながら、正常の耳小骨ないし中耳疾患の耳小骨における破骨細胞数の解析はなされておらず不明である。そこで、中耳疾患のうち、真珠腫性中耳炎、耳硬化症の手術症例で得られた耳小骨から切片を作成した。破骨細胞を染色するTRAP染色以外にエフリン、カテプシンK抗体を用いた免疫染色を用いて破骨細胞を鑑別し計測した。まだ症例数を増やす必要があるが、破骨細胞数は少数である。また、生前に同意を得たご遺体から摘出されたヒト耳小骨において破骨細胞数とは細胞の局在について解析しマウスと異なっていることがわかった。なお、上記の全ての臨床研究は慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認を得て行われた。本研究の臨床的意義)破骨細胞数の実態を把握し、破骨細胞数の制御に関するメカニズムを解析することで以下のような意義がある。骨粗鬆症薬はすでに臨床応用されており、将来的にビスフォスフォネートを応用することで耳硬化症の難聴を予防し、真珠腫性中耳炎による骨破壊予防が行えると期待できる。現在、臨床研究において耳硬化症に対する骨粗鬆症薬が進行性難聴を予防するというデータを得た。また、これらの業績の一部は昨年の国際中耳炎シンポジウムで発表し、最近の中耳炎に関する研究成果という総説(投稿中)の「骨吸収」というセッションで紹介される予定である。
2: おおむね順調に進展している
実験課題は予定通り遂行している。臨床症例から得られる検体を収集中である。マウスGFP破骨細胞も交配させて増殖中である。
破骨細胞の染色法の確立に時間を要したが、その方法は今年度で確立したので研究は迅速に進むと考える。
GFPを発現させるマウスを飼育、増やすための経費となる。また、国際真珠腫学会のシンポジストの骨吸収のシンポジウムにも選ばれた。
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Recent Advances in Otitis Media
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