研究課題/領域番号 |
23592496
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
村田 潤子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80332740)
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研究分担者 |
木村 透 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (50280962)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 内耳発生 / ほ乳類 / PI3/Aktシグナル伝達系 / PTEN / 感覚上皮予定領域 / 有毛細胞 / PTEN cko マウス |
研究概要 |
今回我々はほ乳類内耳発生におけるリン酸化シグナル(PI3/Aktシグナル)経路の機能を解明する事を目的とした。特にその拮抗因子であり、かつ癌抑制遺伝子産物であるPTENの発現・働きにも焦点をあてて検討し、最終的に現在内耳発生に関与している主要なシグナル伝達経路と考えられているNotchシグナル伝達系との相互作用についても明らかにしたいと考えた。我々は平成22年度までに胎生期および生直後のマウスにおいて、リン酸化Aktと PI3/Aktシグナル伝達系に拮抗するPTENについて発現パターンを確認していた。次にPI3K/Akt伝達系の内耳発生における機能解析のためにPTEN-floxマウスとFoxg1-Creマウスの系列を用いて内耳特異的にPTENをノックアウトしたコンディショナルノックアウトマウス(PTEN cko マウス)の作成を開始した。PTEN cko マウスでは内耳で内在性PI3K/Aktシグナル経路が活性化された状態にあると考えられる。平成23年度はPTEN cko マウスの仔のうちConditional (KO)は出生前後に致死となり、内耳ではPTENがdeletionされていて、pAktの発現が上昇していることをまず確認した。その後KOは内耳全体がWTより大きいこと、外有毛細胞(OHC)がしばしば4列構造になっていることが観察された。また増殖細胞がKOではWTに比較して遅くまで観察され、関連して細胞分化の時期もやや遅延していることがMyosin VI陽性細胞の観察から予想された。一方、p27Kip1の発現パターンの解析などから、PTENの欠損は感覚上皮予定領域の決定には影響は与えないと予想された。PI3/Aktシグナルの哺乳類内耳発生における役割については今まで極めて報告の少なかった領域であり、今年度の我々の研究成果は国内外において重要な意味を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PTEN ckoマウスの内耳について発生段階を追って解析することが本年度の目標であったが、我々の作成したPTEN ckoマウスで内耳でのPTENのdeletionがきちんとなされていること、KOが出生前後まで生存するので細胞増殖・分化の解析が可能であることが確認され、実際解析も複数の項目に関して進展がみられ有意な結果が得られてきていることから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
我々が制作したPTEN ckoマウスを利用して内耳発生におけるリン酸化シグナル経路の機能解析を行っているが、さらに今後はリン酸化シグナル経路とNotchシグナル経路の相互作用などについても解析予定である。さらにAkt-Merマウスの胎生期内耳の器官培養系の確立し、個体レベルで検討してきた課題について培養系でも検討予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はPTEN ckoマウスの解析継続のためにマウスの飼育費と免疫染色やRT-PCRなど解析に必要な基本的な実験に要する抗体・キットなどの消耗品代が必要である。さらに新たにAkt-Merマウスを導入、維持し器官培養系を確立するために加わる動物の飼育費、培地などの消耗品の費用等が必要経費となる。これらに次年度の科研費を使用する予定である。
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