研究課題/領域番号 |
23592500
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 光也 東邦大学, 医学部, 教授 (50302724)
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研究分担者 |
坂本 幸士 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50323548)
樫尾 明憲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20451809)
池宮城 慶寛 東邦大学, 医学部, 助教 (50439931)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 基底膜陰性荷電 / C57BL/6マウス / 蝸牛 / polyethyleneimine / ヘパラン硫酸 |
研究概要 |
蝸牛の毛細血管および上皮の基底膜陰性荷電は物質の選択的透過性に関与していると考えられている。目的)蝸牛基底膜陰性荷電の加齢に伴う変化の観察すること 対象と方法)加齢性難聴のモデルとしてしばしば用いられているC57BL/6マウスを対象とした。全身麻酔下に生後3日、4週、8週、6カ月、12カ月齢のC57BL/6マウスの蝸牛を採取し、0.5% cationic polyethyleneimine(PEI)溶液に15分間浸漬後、2%リンタングステン酸、2.5% グルタールアルデヒドで3時間浸漬固定しエポンに包埋した。血管条、ラセン靭帯の毛細血管基底膜、ライスネル膜の基底膜、半規管膨大部の上皮の基底膜と上皮下の毛細血管基底膜のPEI粒子の分布を透過型電子顕微鏡にて観察した。結果および考察)ラセン靭帯、ライスネル膜および半規管膨大部においては、3日、4週、8週、6カ月、12カ月齢の間でPEI粒子の分布に明らかな差はみられなかった。しかし血管条毛細血管のPEI粒子の分布は、3日齢に比較して4週減少傾向がみられ、8週齢、6カ月、12カ月齢では有意な現象が確認された。これはこれまで報告されていない新たな知見であり、加齢性難聴のメカニズムの解明においてその意義は大きい。毛細血管基底膜陰性荷電は主にヘパラン硫酸により構成されているため、ヘパラン硫酸の分布に変化が生じた可能性が考えられた。一般にC57BL/6マウスは6-9ヶ月齢より難聴が生じ始めるといわれているが、本研究では2カ月齢ですでに血管条に変化が見られ始めていた。加齢とともに血管条毛細血管基底膜陰性荷電を構成するヘパラン硫酸は比較的早期より減少し選択的透過性に影響を与えると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のゴールは、加齢性難聴において内耳毛細血管の選択的透過性の変化がどのように影響を与えているかを解明することである。血液-内リンパ関門の変化については血管条毛細血管を、また血液-外リンパ関門の変化はラセン靭帯の毛細血管を対象として観察する。 成熟マウスの大腿静脈よりcationic polyethyleneimine(PEI)を投与したところライスネル膜の基底膜上にはPEI 粒子が多数認められたが、血管条の毛細血管基底膜上にはPEI 粒子は観察できなかった。これはacidosisで血管条毛細血管基底膜の陰性荷電が減少した際に見られる変化と類似していたため、加齢に伴って基底膜陰性荷電が減少した可能性を考えて、蝸牛毛細血管とライスネル膜の基底膜の荷電の変化を観察することにした。その結果、加齢に伴って血管条毛細血管基底膜の陰性荷電が選択的に減少することが明らかとなった。これはこれまで知られていない新たな変化であり、重要な知見である。基底膜陰性荷電を構成するヘパラン硫酸の分布が変化したことを示唆しており、その原因を分子生物学的手法によって解明するとともに、荷電を有しないtracerを用いて透過性の変化を分析する予定である。基底膜陰性荷電が減少するという予想外の変化が生じていたため、研究方法に変更を要したが、それによって新たな知見が得られたことと今後の方向性がより明らかとなっており、研究初年度としての目的を十分に達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず生後3日、1、2、6、12カ月のマウスの4k, 8k, 16k, 32kHz のトーンバースト刺激を用いてABR の閾値を測定し、加齢性難聴の有無と程度を評価する。ABR 測定後に安楽死させ、蝸牛を採取しパラフィン包埋し切片を作製し、免疫染色法を用いてラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンとIgGの分布を月齢別に観察する。血管透過性の変化については、HRP 15mgを生食0.1mlに溶かし、マウスの大腿静脈より30秒以上かけて注射した後に大気中に30分間放置。その後、生食で体内の血液を洗い出してから全身かん流固定および浸漬固定を行う。断頭後、蝸牛をパラフィン包埋して切片を作製し、1000倍率の光学顕微鏡下に血管条、ラセン靭帯、ラセン唇の毛細血管基底膜上のHRPの局在を月齢別に観察し、加齢における蝸牛毛細血管の透過性の変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に行う予定であった急性感音難聴に関する加齢の影響についての解析はまだ途中であり次年度以降に繰り越されることになった。また初年度の結果を受けてその必要性が明らかとなった加齢に伴う基底膜上の免疫複合体の沈着に関する検討が追加されるため、抗体購入およびその周辺備品の整備費として新たに必要な支出となる。次年度の支出予定の内訳は 1.新たにマウスの購入(15万円) 2.免疫染色に必要な抗体の購入および周辺備品の購入(抗IgG抗体 50万円)、抗HRP 抗体(50万円)3.手術器具および免疫染色に必要な備品(30万円)4.データ処理のための統計ソフト(10万円)5.PCの購入(16万円) 6.昨年度の研究内容の論文執筆投稿費用、国際学会で研究成果発表および情報収集するための経費、国内の学会で研究成果発表および情報収集するための経費など(75万円)8.その他(10万円)である。
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