内耳(蝸牛および前庭系)に発現するmiRNAの研究は、欧米において今まさに開始されたばかりであるが、すでにいくつかの貴重な報告がなされた。マウス内耳の発生、分化、成熟の各段階においてmiR-96、miR-182、miR-183が重要な役割を果たすことを明らかにした研究、マイクロアレイ解析(206種類のmiRNA)から胎生マウス内耳に発現するmiRNA(蝸牛で105種類のmiRNA、前庭系で114種類のmiRNA)を同定し、その内のmiR-15aの標的遺伝子が、有毛細胞の分化および機能維持に必須のSlc12a2、Cldn12、Bdnfであることを示した研究、さらにmiR-96の遺伝子変異による難聴モデルマウスの作製、そして実際に遺伝性難聴家系におけるヒト難聴発症因子としてのmiR-96遺伝子変異の同定等が相次いで報告された。 マウス内耳全体、あるいはコルチ器、ラセン神経節、血管条・外側壁、前庭系等の亜部位に分けて、組織よりtRNAを抽出し、mirVana miRNA isolation kit等を用いて、内耳miRNAを抽出、精製する。バイオアナライザー・スペクトロフォトメーターを用いてmiRNAの質的・量的解析を行った。その結果、これまでの報告と同様に、蝸牛および前庭系からそれぞれ100種類を超えるmiRNAを同定した。すでに報告のあるmiR-96、miR-182、miR-183の発現も確認された。 これらのmiRNAの主たる発現部位は、内・外有毛細胞およびラセン神経節細胞であった。これらの分子の標的遺伝子は有毛細胞の分化・機能維持に必須のSlc12a2、Cldn12、Bdnf等の遺伝子群であることが報告されており、内耳の発生段階でこれらのmiRNAが重要な役割を果たすことが推察できた。
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