研究課題
タンパク質をコードしない機能性RNAの一つであるmicroRNA (miRNA)は、配列特異的にタンパクコード遺伝子を標的として、その分解や翻訳を阻害する事で遺伝子の発現を制御している。miRNAの発現異常は、癌の発生、進展、転移において重要な役割を担っている事が報告されている。しかしながら、上顎癌におけるmiRNAの解析報告は無く、上顎癌の分子メカニズムを探索する上で、miRNAの解析は重要である。本研究では、上顎癌臨床検体を用いたmiRNA発現プロファイルを作成し、上顎癌細胞で発現変動を認めるmiRNAの探索を施行した。解析の結果、miR-874、miR-133a、miR-375、miR-204、miR-1、miR-145などのmiRNAが癌細胞で顕著に発現抑制されていた。そこで、これらmiRNAから最も発現抑制されていたmiR-874の着目しその機能を解析した。上顎癌の癌細胞株にmiR-874を核酸導入した結果、細胞の増殖抑制効果を認めた。このことから、miR-874は、上顎癌における新規癌抑制型miRNAである事が示唆された。miRNAの大きな特徴として、一つのmiRNAが複数のタンパクコード遺伝子発現を制御している事である。そこで、上顎癌において、癌抑制型miRNA-874が制御する遺伝子群の探索を行った。miR-874を核酸導入した細胞株とデータベースを用いた解析から、PPP1CAがその標的候補となった。PPP1CAは、上顎癌臨床検体において発現が亢進している事が認められ、癌遺伝子として機能している事が示された。今後、PPP1CAの機能解析を施行し、上顎癌における癌遺伝子機能を探索する予定である。
2: おおむね順調に進展している
上顎洞扁平上皮癌の新規治療法開発に向け、これまでに解析の報告が無いmiRNAの発現プロファイルの作成を施行し、上顎洞扁平上皮癌において発現変動する複数のmiRNAの探索が可能であった。この中から、新規癌抑制型miRNAとして、miR-874を見出した。同様の解析から、上顎洞扁平上皮癌の新規分子ネットワークが探索できる可能性が強く示唆され、研究は概ね順調に遂行している。
これまでに、上顎洞扁平上皮癌の癌抑制型miRNAの候補の選択が終了している。この中から、癌抑制機能を有するmiRNAの同定を継続し、上顎洞扁平上皮癌の新規分子ネットワークの探索を継続する。また、上顎洞扁平上皮癌の臨床に使用されている抗がん剤であるシスプラチンとの増強作用を示すmiRNAの探索を行う予定である。
該当なし
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