研究課題
現在の上顎洞扁平上皮癌の治療は、臓器温存を目指して動注化学療法を併用とした放射線治療が主流となり機能温存が図られている。しかしながら、これら治療に抵抗性を示す症例が存在する事も事実である。また、合併症を抱える患者に対しては、十分な治療を施行できないため、より低侵襲な上顎洞癌の治療戦略の検討が必要である。ヒトゲノム中には、蛋白をコードしないマイクロRNAと呼ばれる19~22塩基程度の1本鎖RNA が存在し、その機能は蛋白コード遺伝子に配列依存的に結合し、分解や翻訳阻害により標的となる遺伝子の発現制御を行う事である。1種類のマイクロRNAは、数十~数千の蛋白コード遺伝子の発現制御を行う事が示唆されおり、マイクロRNAの発現異常は、細胞内のRNAネットワーク(マイクロRNA-蛋白コード遺伝子)の破綻を引き起こす。ヒト癌を含め様々な疾患において、マイクロRNAの発現異常が報告されており、細胞内のRNAネットワークの破綻が疾患の発生や進展に大きな役割を担っている事が明らかとなっている。本研究では、上顎洞扁平上皮癌のマイクロRNA発現プロファイルから、癌抑制型マイクロRNAを探索する事、さらに、癌抑制型マイクロRNAが制御する上顎洞扁平上皮癌の新規分子ネットワークを探索する事を目的とした。研究の成果として、マイクロRNA-874は、癌細胞の細胞増殖を顕著に抑制する上顎洞扁平上皮癌・癌抑制型マイクロRNAであり、そのターゲット分子として、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC1)を直接制御する事を証明した。HDACは細胞内情報伝達や細胞周期の制御にも関与しており、癌治療の標的分子として注目されている分子である。本研究により、上顎洞扁平上皮癌において、癌抑制型マイクロRNA-874-HDAC1の分子経路の重要性が明らかとなり、今後の治療戦略を考える上で大きな手掛かりを得る事ができた。
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Br J Cancer
巻: 109 ページ: 2636-2645
10.1038/bjc.2013.607.
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http://genomejet.jp/