研究課題/領域番号 |
23592509
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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研究分担者 |
神前 英明 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (10402710)
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
小河 孝夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90549908)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80567347)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 好酸球 / 気道上皮細胞 / MUC5AC / ムチン / TGF-alpha / amphiregulin / EGFR / ADAM |
研究概要 |
好酸球性副鼻腔炎の病態を解明する目的で、好酸球由来の細胞株であるEoL-1細胞と気道上皮細胞の細胞株であるNCI-H292細胞を共培養して相互作用を検討した。24時間の共培養により、加えたEoL-1細胞の数に比例して、上皮細胞からのムチン(MUC5AC)分泌やサイトカイン(PDGF、VEGF、TGF-beta、IL-8)分泌が有意に増加し、6時間時点でそれぞれのmRNA産生の上昇も確認した。 相互作用の機序を明らかにする目的で、MUC5AC分泌に関わることが知られているIL-1beta、IL-13、TNF-alpha、EGF受容体について検討したが、IL-1beta、IL-13、TNF-alphaはそれぞれの中和抗体を加えてもMUC5AC産生に変化は認められなかった。一方、EGFR tyrosine kinase inhibitorであるAG1478は共培養によるMUC5AC産生を抑制した。 そこでEGFRのリガンドであるTGF-alphaとamphiregulinについて検討したところ、上清へのTGF-alphaの産生は認められなかったが、TGF-alphaの中和抗体により共培養によるMUC5AC産生は有意に抑制された。また、上清中のamphiregulin濃度は有意に上昇し、amphiregulinの中和抗体も共培養によるMUC5AC産生を抑制した。さらに、こうしたEGFRのtransactivationに関わるADAM (a disintegrin and metalloprotease)の役割について、metalloprotease抑制薬GM6001は共培養によるMUC5AC産生を有意に抑制した。以上の結果、共培養による粘液産生にはADAMとTGF-alphaやamphiregulinを介したEGFRのtransactibvationが関わっていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、好酸球由来の細胞株であるEoL-1細胞と気道上皮細胞の細胞株であるNCI-H292細胞の共培養により、上皮細胞からのムチン(MUC5AC)分泌やサイトカイン(PDGF、VEGF、TGF-beta、IL-8)分泌が有意に増加することが確認できた。また、特に粘液分泌に関する相互作用には、TGF-alphaやamphiregulinを介したEGFRのtransactibvationが関わっていることも明らかにできた。また、EGFRはPDGF、VEGF、IL-8の産生にも関わるが、TGF-beta産生には別の機序が関わることも確認した。 さらに、文字数の関係で記載できなかったが、こうしたムチン産生の増加は、好酸球の上清を加えただけでは生じなかったが、フィルターを利用して好酸球と上皮細胞の接着を妨げても観察できた。以上の結果より、好酸球と上皮細胞の間には相互に液性因子を介して刺激しあう機序が存在することが考えられた。 このように好酸球と上皮細胞の相互作用により、粘液、サイトカイン産生が生じ、鼻茸形成などの組織リモデリングに働くことが明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
最初に好酸球と上皮細胞の相互作用について、正常細胞でも同様な現象が生じているかどうか確認する必要がある。 次に、相互作用の結果どのようにEGFRがtransactivationされるのかを検討する。予備実験においてロイコトリエン受容体拮抗薬がこうした相互作用を抑制することがわかったが、どのような機序で抑制しているのか検討する予定である。 また、EGFRを介さないTGF-beta産生の機序についても検討したい。 さらに、ステロイド以外に適切な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎に対する新たな治療薬を検討する目的で、好酸球と上皮細胞の相互作用に注目し、EGFRのtransactivationをターゲットとして、EGFRの受容体阻害薬やmetalloprotease阻害薬の作用を動物モデルを利用してin vivoで検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)正常細胞での相互作用を確認する。健康人から分離した好酸球を用いた検討を行う。可能であれば正常ヒト鼻粘膜上皮細胞での検討も加える。2)予備実験で、ロイコトリエン受容体拮抗薬がこうした相互作用を抑制することが確認できた。そこでこうした相互作用にロイコトリエンがどうかかわっているか、上清中のロイコトリエン濃度を測定するとともに、好酸球・上皮細胞にロイコトリエンC4、D4を加えた時の粘液・サイトカイン産生を検討し、好酸球や上皮細胞のロイコトリエン受容体をそれぞれsiRNAで抑制した時の反応を検討する。さらに、ロイコトリエン受容体をターゲットにした新たな治療手段の検討を行う。3)新たな治療手段のターゲットとして、EGFRのtransactivationが考えられる。そこで、LPS刺激や卵白アルブミン刺激で作成した、ラット鼻粘膜のLPS刺激モデルやアレルギー性炎症モデルを利用して、EGFR阻害薬やmetalloprotease阻害薬の作用をin vivoで検討する。内服投与と点鼻投与の効果についてそれぞれ比較する予定である。
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