研究課題/領域番号 |
23592509
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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研究分担者 |
神前 英明 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (10402710)
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
小河 孝夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90549908)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80567347)
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キーワード | 好酸球 / 気道上皮細胞 / MUC5AC / ムチン / EGFR / 鼻茸 / 慢性副鼻腔炎 / ADAM |
研究概要 |
好酸球性副鼻腔炎の病態を解明する目的で、好酸球由来細胞株であるEoL-1細胞と気道上皮細胞の細胞株であるNCI-H292細胞を共培養して、その相互作用を検討した。 昨年度の検討で、加えたEoL-1細胞の数に比例して、ムチン(MUC5AC)産生やサイトカイン(PDGF, VEGF, TGF-beta, IL-8)産生が著明に増加することを確認した。EGF受容体の抑制薬やADAM(a disintegrin and metalloprotease)の作用を抑制するmetalloprotease抑制薬が相互作用を抑制したことなどから、こうした相互作用の機序として、TGF-betaを除くサイトカインとムチン産生には、上皮細胞におけるEGF受容体のtransactivationが関わっていることも明らかにした。 当該年度においては、末梢血から分離した正常好酸球を用いた検討を行い、正常好酸球においても上皮細胞との共培養により著明なムチン産生が生じることを確認した。また、こうした相互作用は培養好酸球の上清で上皮細胞を刺激しても生じないが、好酸球と上皮細胞の接着をフィルターで遮っただけでは抑制されず、液性因子を介した好酸球と上皮細胞の相互作用が関与していると考えられた。 さらに、共培養後に上皮細胞と好酸球を回収してmRNAの発現を検討したところ、ムチンやVEGFは上皮細胞から産生され、EGF受容体の活性化に関わるamphiregulinやTGF-alphaも上皮細胞から産生されることも明らかにした。免疫染色を用いてEGF受容体が鼻粘膜上皮細胞に発現していることも確認した。以上の結果から共培養によるEGF受容体のtransactivationは上皮細胞の細胞膜上で生じていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好酸球由来の細胞株であるEoL-1細胞と上皮細胞細胞株NCI-H292細胞の共培養により、ムチン産生やPDGF, VEGF, TGF-beta, IL-8などのサイトカイン産生が著明に促進され、好酸球性副鼻腔炎で特徴的にみられる、杯細胞化生(粘液産生)や鼻茸形成などの組織リモデリングの病態に好酸球と上皮細胞の相互作用が重要であることが明らかにできた。 また当該年度においては、末梢血から分離した正常好酸球でもこうした作用が確認できた。さらに液性因子を介した好酸球と上皮細胞の相互作用が、上皮細胞上のADAM(a disintegrin and metalloprotease)を活性化して、膜結合型のamphiregulinやTGF-alpha放出を介して、上皮細胞のEGF受容体をtransactivationして生じていることも明らかにできた。 以上の結果、好酸球性副鼻腔炎においては、浸潤した多くの好酸球と鼻粘膜上皮細胞の相互作用によって、ムチンやサイトカイン産生が著しく亢進し、鼻茸形成や粘液産生などの特徴的な組織リモデリングが生じると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
好酸球と上皮細胞の相互作用によって、ADAMを介した上皮細胞のEGF受容体のtransactivationが生じていることは確認できたが、どのような機序によってADAMが活性化されるかについてはまだわかっていない。ロイコトリエンの受容体拮抗薬がこうした作用を抑制することは確認できているが、ロイコトリエンがどうかかわっているかについては不明なままである。こうしたADAM活性化の機序についての検討を進める予定である。 好酸球と上皮細胞の相互作用をターゲットとした新たな治療手段の確立を次の目標にしたい。現在ステロイド以外に有効な薬物療法がない好酸球性副鼻腔炎に対する新たな薬物療法を検討する目的で、ラットのアレルギーや炎症モデルを利用して、EGF受容体抑制薬やmetalloprotease抑制薬を全身あるいは局所投与してその効果を検討する予定である。 さらに可能であれば、EGF受容体の抑制薬では抑制されなかったTGF-alpha分泌の機序や、好酸球と線維芽細胞の共培養の効果についても検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)ロイコトリエンが共培養における相互作用にどうかかわっているのか、上清中のロイコトリエン濃度を測定し、ロイコトリエンC4,D4を加えた際のムチン・サイトカイン産生を検討する。さらに、siRNAを利用して、上皮細胞、好酸球それぞれのロイコトリエン受容体の機能を抑制した時の反応を検討する。 2)EGFR受容体のtransactivationをターゲットとして、卵白アルブミン刺激やLPS刺激で作成した、ラット鼻粘膜のアレルギー・炎症モデルを利用して、EGF受容体抑制薬の作用を全身投与と局所投与でin vivoで比較検討する。 3)鼻茸から分離した線維芽細胞と好酸球の共培養を試みて、PDGF, VEGF, TGF-betaなどのサイトカイン産生とともに上皮細胞の増殖に対する影響について検討する。
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