1.IgA腎症腎糸球体への扁桃T細胞の浸潤 IgA腎症扁桃におけるTリンパ球上のケモカインリセプターについて検討したところ、CCR4、CCR5、CCR6陽性T細胞の割合は習慣性扁桃炎群、IgA腎症群にて変化は認められなかった。しかし、CXCR3の発現はIgA腎症群にて有意に高い結果となった。次にCpG-ODN刺激後の扁桃リンパ球におけるCXCR3発現の変化を検討したところ、IgA腎症群にて有意にCXCR3陽性細胞の割合が増強していた。さらに末梢血におけるT細胞上のCXCR3の発現を検討したところ、習慣性扁桃炎群と比較してIgA腎症群にて有意に発現が高いことを確認した。またその発現は扁桃摘出術後有意に低下していた。IgA腎症の腎生検組織では腎糸球体浸潤CXCR3陽性細胞が存在し、その程度と扁桃でのT細胞上のCXCR3発現度に相関が認められた。 2.IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生の機序 T細胞非依存的にIgAの産生を促すAPRIL(a proliferation-inducing ligand)に着目し検討した。無刺激下において、IgA腎症扁桃リンパ球は習慣性扁桃炎扁桃リンパ球と比較して有意にAPRILを過剰に産生していた。しかし、CPG-ODN刺激下での産生亢進は両疾患群とも認めなかった。次に、CpG-ODN刺激後のB細胞におけるAPRIL受容体の発現は、IgA腎症群において有意に増加していた。また、IgA腎症扁桃B細胞にてCpG-ODNと同時にAPRILも追加刺激し、IgAの産生が亢進するのを確認し、さらにIgA腎症扁桃リンパ球をCpG-ODNと同時にAPRIL受容体阻害抗体存在下で培養し、IgAの産生が低下するのを確認した。また、末梢血における血清APRILを測定し、習慣性扁桃炎群と比較してIgA腎症群にて有意に値が高く、扁桃摘出術後は有意に低下することを確認した。
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