研究課題
頭頸部癌は咽頭・喉頭等に発生し、咀嚼、呼吸、嚥下等の生体機能を損なうことから、単に生命予後のみならずQuality of Lifeの観点からもその克服が急務である。頭頸部癌の克服を目的として、頭頸部癌のEMTによる悪性化と「幹細胞」誘導の連携に焦点を当て、責任分子としてのポリコム関連遺伝子の役割を明らかとする。頭頸部癌の悪性化を誘導する遺伝子を同定し、EMT誘導と癌幹細胞誘導の分子細胞生物学的な検討を行う。In vitro解析系を基に癌細胞悪性化に細胞生物学的解析を加えることで、頭頸部癌の悪性度を司る分子機構の解明を展開するとともに、超免疫不全NOGマウスに癌細胞株を移植する。(1)新たな頭頸部癌悪性化分子の同定、(2)癌幹細胞誘導との連携の可能性を検証、(3)治療標的の同定を目指す。本年度は下記の解析を施行した。第1に、頭頸部癌細胞株HSC-3,HSC-4等を対象としてポリコム遺伝子のうちZnf277, Bmi1, EZH2に着目し細胞株に発現させ、EMT関連分子の発現を調べた。HSC-3に対してレトロウイルスベクターでポリコム遺伝子を導入したところ、CD44が発現上昇し細胞間接着の変化が示唆された。一方、細胞形態の顕著な変化は観察できなかった。1)E-Cadherin, 2)vimentin等のEMTマーカーの発現については次年度以降に解析を行う。第2に、EMTが誘導されれば癌細胞の悪性度が増加するはずである。ポリコム遺伝子が新頭頸部癌の悪性化を惹起させか検証するため、頭頸部癌の癌幹細胞性誘導について解析した。その結果、Bmi1を導入したHSC-3細胞では幹細胞マーカーであるALDHの陽性率が有意に上昇した。以上の結果から、ポリコム遺伝子の発現により、EMT様と考えられる細胞接着分子の発現変化と幹細胞性の誘導可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
頭頸部癌細胞に対して予定通りポリコム遺伝子を導入して、癌形質を解析しており、おおむね順調であると評価する。
頭頸部細胞株を複数用いた解析を行うことで、解析の一般化を行う。予定どおりである。
予定通り、細胞培養関係と化学薬品等の消耗品の購入にあてるほか、マウス購入費用として使用する計画である。特段の変更はない。
すべて 2011
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PLoS One
巻: 6 ページ: 1-14
10.1371/journal.pone.0029460