研究課題
Activation-induced cytidine deaminase (AID)に関する研究を施行した。AIDは免疫グロブリンの遺伝子変異やクラススイッチによる多様化に必須の酵素であるが、免疫グロブリン以外の遺伝子にも変異をきたし得る。近年ではDNAに遺伝子変異を生じ発癌性に関与することが報告されてきた。口腔癌27例においてAIDに対する免疫染色を施行した。正常舌粘膜に染色は見られなかったが、癌では10例(37%)においてAIDの発現を認めた。腫瘍をT1+T2およびT3+T4の2群にわけて発現を検討すると、前者の方が有意に高率に発現していた(p<0.05)。また、N0とN2+N3の2群にわけた検討では、有意ではないが前者の方が高率に発現していた(p=0.08)。蛍光染色により、サイトケラチンの発現とAIDの発現の局在を比較すると、AIDはサイトケラチン発現細胞に一致して発現していた。HSC-2細胞は非転移性、HSC-3細胞は転移性のモデルとして用いられる培養細胞であるが、AIDの発現はRT-PCRにより前者において検出され、後者においては検出されなかった。炎症性サイトカインであるTNF-αでそれぞれの細胞を処理すると、AIDの発現は前者では著明に誘導されるが、後者では誘導が見られなかった。これらの結果から、口腔粘膜上皮においてAIDは癌のイニシエーションに関与していることがうかがわれた。
すべて 2013
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PLoS One
巻: 8(4) ページ: e62066
10.1371/journal.pone.0062066