研究課題/領域番号 |
23592524
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
三澤 清 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90334979)
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研究分担者 |
峯田 周幸 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40190714)
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キーワード | 癌幹細胞マーカー / 頭頸部癌 / メチル化 |
研究概要 |
頭頸部癌における癌幹細胞の役割と新規治療法の探索という研究テーマで、研究を遂行している。ポリコーム群複合体(PRC)と呼ばれる遺伝子発現調節タンパク質複合体は、核内でヒストン修飾やDNAメチル化などのエピジェネティックな転写制御を通じて、幹細胞に特異的な遺伝子発現の維持を行うことが知られている。PCR1の主要構成分子のBmi1、PRC2のEZH2などが癌幹細胞マーカーとして固形腫瘍においても異常発現を認めることが報告されている。今年度、Bmi1、EZH2の蛍光免疫染色、mRNA発現解析と癌抑制遺伝子のDNAメチル化解析を行った。方法は、細胞株Hep-2を使って蛍光免疫染色によりBmi1、EZH2の発現部位を確認した。また、臨床検体91例からのRNAを抽出しQ-PCR法にてmRNA発現解析をした。また同じくDNAをバイサルファイト処理し9遺伝子のメチル化解析を行った。結果は、Bmi1は29.6%、EZH2は24.1%に高発現を認めた。これらの高発現症例群はカプランマイヤー法による予後解析によって予後不良であった(p<0.05)。メチル解析では、Bmi1、EZH2が高発現の症例群では、癌抑制遺伝子のメチル化は高頻度に認めた(p<0.05)。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)にて細胞を治療するとBmi1、EZH2の発現が低下することを確認した。これらの結果から、頭頸部癌における癌幹細胞マーカーBmi1、EZH2とエピジェネティック異常との関連と頭頸部癌における予後マーカーになることがわかった。来年度は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)剤をつかった治療をが頭頸部癌にどのような効果をもたらすか研究する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、Bmi1、EZH2の蛍光免疫染色、mRNA発現解析と癌抑制遺伝子のDNAメチル化解析を行った。方法は、細胞株Hep-2を使って蛍光免疫染色によりBmi1、EZH2の発現部位を確認した。また、臨床検体91例からのRNAを抽出しQ-PCR法にてmRNA発現解析をした。また同じくDNAをバイサルファイト処理し9遺伝子のメチル化解析を行った。結果は、Bmi1は29.6%、EZH2は24.1%に高発現を認めた。これらの高発現症例群はカプランマイヤー法による予後解析によって予後不良であった(p<0.05)。メチル解析では、Bmi1、EZH2が高発現の症例群では、癌抑制遺伝子のメチル化は高頻度に認めた(p<0.05)。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)にて細胞を治療するとBmi1、EZH2の発現が低下することを確認した。これらの結果から、頭頸部癌における癌幹細胞マーカーBmi1、EZH2とエピジェネティック異常との関連と頭頸部癌における予後マーカーになることがわかった。これらのことからこの研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.癌幹細胞マーカーBmi1、EZH2の転写因子であるSALL1, SALL3, SALL4遺伝子を導入し、癌幹細胞マーカーの発現の変化をみる。 2.癌幹細胞マーカーとその転写因子の発現を、臨床病理学的評価を行う。 癌幹細胞マーカー、その転写因子であるSALL1, SALL3, SALL4遺伝子の発現が、頭頸部癌症例の臨床病期、予後、放射線化学療法の効果などへの関連が分かると新規の癌幹細胞治療導入時の個別化が可能になる期待がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
頭頸部癌細胞の遺伝子導入に必要なsal like各遺伝子発現プラスミドを構築する。 各遺伝子のC末端にHA タグを付加した遺伝子配列を構築し,更に,サイトメガロウイルスプロモーターの下流にsal like HA-Ires (internal ribosome entry site)-GFPの順にそれぞれの遺伝子を配列しsal like遺伝子とGFPが共発現するように設計する.このプラスミドを頭頸部癌細胞株に遺伝子導入した後,GFPをマーカーとしてフローサイトメトリーを用いて選択し安定細胞株sal like細胞およびコントロール細胞株mock 細胞を樹立する。 sal like各遺伝子は癌幹細胞の転写であることが想定されており細胞増殖に変化を起こすと考えられる。 細胞増殖の変化は,細胞数の計測により行い,細胞周期はBrdU (5-bromo-2'-deoxyuridine)の取込み率で比較する。 また,アポトーシスの有無は,カスペース3の活性化を指標とする。 また,細胞形態に関しては,通常の光学顕微鏡の観察に加え,E-カドヘリンやB-カテニンなどの細胞骨格蛋白の発現変化や細胞内局在の変化をウエスタン解析および共焦点顕微鏡を用いて観察する。
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