研究課題/領域番号 |
23592525
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤本 保志 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40344337)
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キーワード | 咽頭癌 / 喉頭感覚 / 嚥下圧 / 嚥下動態 |
研究概要 |
(目的)頭頸部癌治療において放射線治療は機能温存治療の核となるものであるが、化学療法の併用などにより治療強度を高めることでその治療成績が向上してきた。一方、それに伴い治療後の嚥下障害が近年クローズアップされてきている。広範囲放射線治療症例(上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌)などによる嚥下障害の病態はおもに嚥下造影検査の検討によって多く報告されるにいたったが、嚥下機能低下のメカニズムの解明には至っていない。本研究は喉頭感覚検査、嚥下造影検査、嚥下圧測定などにより多面的な検討を行い、嚥下機能低下の原因、病態を解明することを目的とする。 (対象と方法)初年度の喉頭癌・下咽頭癌のため放射線治療を行った12例に加えて舌根や口峡部を照射野に含む中咽頭癌症例・下咽頭癌進行例を対象に6例を追加した。治療前、治療後3,6,12ヶ月後の嚥下造影検査、喉頭感覚検査、臨床所見として誤嚥性肺炎の罹患や摂食状況を調査した。嚥下造影検査画像はデジタル化し、パーソナルコンピューター上で咽頭期惹起遅延時間、舌骨運動の軌跡、咽頭残留、誤嚥および喉頭侵入の程度を定量的・半定量的に解析した。 (結果)新規症例も全例で喉頭感覚の低下がみられた。舌根癌症例では胃瘻に依存せざるをえず、重篤な嚥下障害を来している。広範囲照射症例では咽頭期惹起遅延時間、舌骨運動の軌跡(挙上距離、挙上速度)などが放射線治療後に悪化していた。 (考察)広範囲放射線照射により舌根、咽頭後壁が照射野に含まれることにより、嚥下機能が低下する。いまだ登録症例の長期経過をみている途上であるが今後の検討により照射野と機能障害との関連について知見がえられることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線治療後の喉頭感覚検査所見と嚥下造影所見との関連についての結果を2012年7月にトロントでひらかれたInternational Conference on Head and Neck Cancerにおいてポスター発表を行った。 放射線照射野が喉頭に加えて舌根部や口峡部を含む下咽頭癌および中咽頭癌症例において6例の新規症例登録がなされた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、下咽頭癌および中咽頭癌で化学放射線治療を行う患者を対象として、喉頭感覚検査、嚥下圧検査、嚥下造影検査を継続して行う。すでに登録した患者の6ヶ月後以降の経過観察に加えて、さらに6例以上の症例追加を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
計測ソフトウエアの更新費用のほか、成果報告のため日本嚥下医学会および日本頭頸部外科学会、Dysphagia reserchSociety等への出張費用、および論文校正費用・投稿費用等に使用する予定である。
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