研究課題/領域番号 |
23592526
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楯谷 一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20526363)
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研究分担者 |
平野 滋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10303827)
武藤 学 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40360698)
北村 守正 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60543262)
嘉田 真平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (70543263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 下咽頭癌 / 表在癌 / 免疫染色 / 発現プロファイリング |
研究概要 |
NBI(narrow band imaging)の技術を用いることで従来の内視鏡では見つけることの出来なかった微細な頭頸部表在癌が検出できるようになった。このような微細な癌に対しては内視鏡下あるいは直達喉頭鏡下で経口的に小侵襲で切除することによりほぼ100%生存率が見込めるが、症例の蓄積により問題点も明らかとなってきた。すなわち、1)表在癌すべてが放置すると浸潤癌に移行するかは不明であること、2)内視鏡下切除は侵襲の小さい治療ではあるが、多発病変を切除すれば狭窄による嚥下障害を生じえること、3)一次治療後に後発頸部リンパ節転移を来たす予後不良な症例も存在すること、である。表在癌の予後を予め予測できれば、症例に応じた治療戦略を取ることが可能になる。本研究は表在癌のプロファイリングを行い予後不良症例や浸潤癌と比較することで予後に関わる因子を同定し、治療戦略につなげていくことを目的として施行している。 本年度は免疫染色によるタンパクレベルでの発現プロファイリングを行った。当科で加療を行った下咽頭表在癌5例及び下咽頭上皮内癌5例を用い、他の悪性腫瘍で発癌関連タンパクとして知られているki67、p53、EGFR、HER2の発現を調べた。 p53はアポトーシスに関連し、下咽頭進行癌での陽性率は60-80%とされる。Ki-67は細胞増殖能の指標として利用され、下咽頭進行癌での陽性率は95-100%とされる。EGFRは生物学的悪性度と相関することが報告されており、下咽頭進行癌での陽性率は42-80%である。HER2はEGFRと共に増幅がみられ、その発現強度は組織学的悪性度・核異型度と相関すると言われる。 免疫染色の結果、p53は表在癌の1例を除きすべて陽性、ki67は上皮内癌、表在癌ともに全例陽性であり、表在癌、上皮内癌ともにEGFR,HER2の増幅はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画はサンプルの採取並びに、免疫染色によるタンパクレベルでの発現解析であった。ともに予定通り施行できており、研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
表在癌サンプルの発現プロファイリングをmRNAレベル、タンパクレベルで行なう予定である。mRNAレベルの解析はDNAマイクロアレイ、定量的PCRを行い、タンパクレベルの解析では免疫染色、質量顕微鏡を行なう。浸潤癌にも同様の解析を行い、これらの解析により得られた発現プロファイリングを、1)表在癌と浸潤癌、2)上皮下浸潤例と非浸潤例、3)後発リンパ節転移のあった例となかった例、で比較し、予後との関連因子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き、サンプル採取を継続する。 凍結標本サンプルが集まり次第、順次質量顕微鏡法、定量的PCR、DNAマイクロアレイによる解析を開始する。 質量顕微鏡は顕微鏡下にレーザーのスポットを2次元的に走査することで組織切片上の任意の分子の位置情報を同定するものであり、次世代の解析器機としてここ数年国内外で開発が進められている。この方法により数十μmの解像度で数千―数万の既知あるいは未知の分子(タンパク、糖鎖、脂質)の発現分布を一度に得ることが可能であり、例えば同一切片上で上皮下浸潤部分と非浸潤部分の分子発現を網羅的に比較することが可能となる。質量顕微鏡に関しては器機が京都から遠方にあるため、ある程度の数のサンプルが溜まった時点で一度に解析を行なう予定である。
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