昨年度に引き続き、鼻呼吸時および口呼吸時の上気道閉塞部位といびきの音響特性について研究を行った。特に、呼吸様式が変化する症例での睡眠中の上気道形態の変化といびきの音源となりうる狭窄部位の推定のため、CTデータと音響特性の関連を検討した。前年度の結果から 1)口呼吸による上気道形態の狭小化は、主として舌根の後下方移動にともなう中咽頭断面積の減少とベルヌーイ効果による咽頭粘膜の振動に由来する可能性が考えられ、いびき音は開口に伴い高周波数域の雑音成分が増加すると考えられること、2)また閉口のうえでの努力性鼻呼吸が上気道狭窄を誘発するものでは、鼻内が狭小化している上に、咽頭軟性組織が脆弱であることから、吸気時の上咽頭から中咽頭への気流速度が増加した場合、上気道を構成する咽頭軟性組織への強い圧変化が生じ、いびきの原因となる粘膜振動が発生するため、閉口鼻呼吸時のいびき音は鼻口呼吸併用時と比較して、音圧の高い重低音となる可能性を考えたが、呼吸様式が変化する症例では、これらの音響特性が呼吸様式に伴い再現されるものが多いことが示唆された。しかし、再現されない例もあり、今後は、咽頭内圧の測定による音源の確定と、上気道形態変化を再現するモデルを作成した上で、いびき音の変化の再現の有無を確認する必要が残された。
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