研究課題/領域番号 |
23592530
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
兵頭 政光 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (00181123)
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研究分担者 |
小森 正博 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (30565742)
西窪 加緒里 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (60380242)
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キーワード | 嚥下障害 / 嚥下造影検査 / 嚥下内視鏡検査 / 病態評価 / カプサイシン |
研究概要 |
嚥下障害の病態を客観的・定量的に評価し、嚥下機能の評価基準を作成することを目的として以下の研究を行った。嚥下造影検査では造影剤を嚥下させた際の喉頭挙上距離、喉頭挙上度、喉頭挙上遅延時間(LEDT)、造影剤の咽頭通過時間(PTT)を、2次元動画解析ソフト(DIPP Motion Pro-2D)を用いて定量的に計測した。その結果、これらは嚥下障害の様式や重症度を評価するための指標として有用であることを明らかにした。嚥下内視鏡検査ではわれわれが提唱したスコア評価法を用いて嚥下機能を客観的に評価し、その結果に基づいて嚥下障害患者における経口摂取の可否の判断を行う基準について検討を行った。これにより、必ずしも嚥下障害を専門としない医師や言語聴覚士などのコメディカルにおいても、嚥下機能の病態評価や治療方針の決定が客観的に行えると考えられる。また、咽喉頭内視鏡に接続できる高速度カメラを用いて、嚥下時の声門閉鎖や嚥下反射の惹起のタイミングについても現在、検討を行っている。 治療においては、主にカプサイシンを用いた薬物治療の効果を、さまざまな原因による嚥下障害患者において検討した。カプサイシン(4.5μg/日)を2週間以上投与することで、LEDTやPTTの改善が得られた。カプサイシン投与前後の血中サブスタンスP濃度を測定すると、投与後徐々に増加し、1週間後には1.5倍に増加した。サブスタンスPは嚥下反射や咳反射に関わる神経伝達物質であることから、カプサイシン投与により嚥下機能改善効果が期待できると考える。現在は、カプサイシン投与が実際の経口摂取内容の改善に及ぼす効果について臨床的検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査による嚥下機能の客観的評価法は概ね確立することができている。特に嚥下内視鏡検査のスコア評価法は、実際の臨床にも使用しているが嚥下障害に重症度判定や経時的比較、経口摂取の可否の判断などにおいて有用である。また、本スコア評価法は国内の多くの施設でも用いられるようになっている。高速度カメラを用いた嚥下器官の運動性の評価については、現在、臨床データを収集しているとともに、その評価方法についても検討を行っているところである。 治療においてはカプサイシンを用いた嚥下障害治療を積極的に行っており、そのデータの解析を進めている。今後もさら症例数を増やして、原因疾患毎の解析や治療効果のメカニズムについて検討を行う予定である。 以上より、現在のところ研究計画は概ね順調に達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査における検査データをさらに蓄積する。特に、嚥下内視鏡検査のスコア評価法については、その結果に基づいて治療方針を決定し、その経過を追跡する前向き研究に取り組む予定である。また、嚥下障害患者に対して嚥下圧検査実施し、嚥下圧波形の解析や嚥下圧伝搬波形の作成を通して、嚥下障害のより客観的な病態評価に取り組む。また高速度カメラを用いて嚥下器官の運動をより詳細に観察し、病態評価や治療への応用を目指す。これらの検査法による嚥下機能の評価結果と治療結果を突き合わせることで、嚥下障害の病態に応じた治療指針を提案する。 嚥下障害に対する治療としては、カプサイシンをはじめとする薬物治療を推進し、リハビリテーション、外科的治療などを含めた治療法の選択基準や集学的治療の適応基準を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査、および嚥下圧検査を引き続き実施するのに必要な各種消耗品、そのデータを記録・保管・管理するための経費に用いる。治療では薬物治療に用いるカプサイシン含有フィルムなどの購入費、カプサイシン投与前後での血清中のサブスタンスP濃度を比較するための、検査委託費にも充当する。 また、本研究の成果は各種の全国学会・国際学会ならびに論文にて発表する予定であり、そのための旅費、論文作成費、論文別刷り印刷費などにも用いる。
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