研究概要 |
頭頸部領域において臨床的に問題となる重複癌(二次癌)の発生を予防する方法の探索目的に本研究を行った。具体的には上気道粘膜に対するField Cancerization(がんのプログレッション) を薬剤やビタミン投与にて予防、停止できるかどうかを、ハムスターの頬粘膜モデルを用いて解析してきた。 2年目までにシリアンハムスターの頬粘膜(頬袋)に発癌物質である7-12-dimethylbenz anthracene(DMBA)を塗布することでハムスターの口腔内に扁平上皮癌を作製し、肉眼的、病理学的に確認できた。この発癌モデルハムスターにレチノイン酸(13-cisRA, ATRA)を投与することによりDMBAによる発癌のプログレッションが抑制されるかどうかの確認を実験個体数を増やして行った。コントロール(媒体のみ)に比し13-cis RA投与により発癌に対する一定の抑制効果を認めたものの、有意差は得ることができなかった(個体によっては造腫瘍性が抑制されるレベル、個体数が少なく統計解析が難しい)。ATRAでは発癌の抑制効果は認められなかった。投与したレチノイン酸の口腔内での濃度、体内動態など不明な点が多く、実際化学予防剤として有効であったかわからない。個体数を増やしてゆくことで今後造腫瘍性を有意に抑制する結果が得られる可能性もあり、研究は継続させてゆく予定である。
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