研究課題/領域番号 |
23592533
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
倉富 勇一郎 佐賀大学, 医学部, 准教授 (30225247)
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研究分担者 |
佐藤 慎太郎 佐賀大学, 医学部, 助教 (50304910)
門司 幹男 佐賀大学, 医学部, 助教 (90380782)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 舌癌 / 上皮‐間葉系移行 / ラミニン |
研究概要 |
1)ヒト舌癌手術切除組織を用いた免疫組織学的検討 これまでに手術切除した舌癌症例のうち、癌発生部位では癌細胞が接着した胞巣性増殖を示すが浸潤先進部位では分散性の浸潤を示した症例を対象とし、切除舌癌組織パラフィンブロックを材料とした。薄切切片を作成し、上皮‐間葉系移行(EMT)に関する抗体を用いた免疫染色を行い、以下の結果を得た。 (1)同一症例の中で、ラミニンγ2鎖は胞巣性増殖では辺縁性に発現するが分散性浸潤ではびまん性に発現しており、発現タイプの移行がみられた。(2)胞巣性増殖ではE-カドヘリンの発現が細胞膜に認められたが、分散性浸潤ではその発現が低下していた。(3)EMTのマーカーの一つであるSnailの発現やEGF受容体のリン酸化、TGFbeta受容体の活性化が分散性浸潤で亢進するかどうかについては、明らかな染色結果は未だ得られていない。舌癌同一症例の中で胞巣性増殖から分散性浸潤へ移行する場合に、ラミニンやカドヘリンの発現が変化することは確認できたが、その過程でEMTが生じているかどうかの直接的証明にはさらなる検討が必要である。2)コラーゲンゲルを用いた扁平上皮癌細胞の3次元培養系の樹立 研究室内にインキュベータやクリーンベンチを再整備し、扁平上皮癌細胞(高分化および低分化)、線維芽細胞の細胞培養を再開させた。I型コラーゲンゲル基質上に扁平上皮癌細胞を培養し、癌細胞の重層化とゲル内への浸潤像がみられるかどうかを確認した。その結果、コラーゲンゲル内に線維芽細胞が併存する場合は癌細胞の浸潤像がみられるが、併存しない場合は癌細胞の重層化のみで浸潤像はみられないことが確認できた。扁平上皮癌細胞のEMT誘導をin vitroで観察する3次元培養系は予定通り確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同一症例のヒト舌癌手術切除組織を用いた免疫組織学的検討では、胞巣性増殖から分散性浸潤への移行に伴いラミニンγ2鎖およびE-カドヘリンの発現が変化することが確認できた。ただしその移行過程において、EMTのマーカーであるSnailの発現変化やEGF受容体、TGFbeta受容体の活性化についてはまだ確認できなかった。抗体の選択や染色条件を検討するとともに、新鮮切除標本での検討が必要と考えている。 in vitroでの扁平上皮癌細胞のEMT誘導を観察するための3次元培養系の樹立に関してはほぼ予定通り研究を進めることができた。 以上の結果から、達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト舌癌切除組織におけるEMT誘導に関する免疫組織学的検討については、抗体や染色条件を検討し、すでに手術を施行した症例についてさらに免疫染色を行っていく。加えて、新たに手術切除する新鮮組織標本について免疫染色を行い、胞巣性増殖から分散性浸潤への移行がみられる症例においてEMTが誘導されているかを検討する。 3次元培養系を用いたin vitroにおける扁平上皮癌細胞のEMT誘導実験では、I型コラーゲンゲル基質内にEGFやTGFbetaを添加し、癌細胞の浸潤性が亢進してEMTが誘導されるかどうかを検討する。またコラーゲンゲル内にラミニン由来の活性ペプチドを添加することでEMTが誘導されるかどうかについても検討し、扁平上皮癌のEMT誘導におけるラミニンの関与についても検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、ヒト舌癌切除組織の免疫染色に必要な抗体や試薬類、および3次元培養系実験に必要な抗体、試薬類などを中心に使用する予定である。 研究成果の一部について、今年度に、国内の学会とともに国際学会でも発表を予定しており、そのための旅費を使用予定である。
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