研究課題「頭頸部癌治療おける高濃度酸素療法の可能性とロックス1発現に関する検討」において、本研究の最終目的は頭頸部癌に有効な新規治療法を確立することであった。この目的を達成するための短期目標に、平成23年度においてはまず分子生化学的手法を用いて、ロックス1の癌細胞に及ぼす分子生化学的機序を解明することを挙げた。すなわちヒトロックス1のcDNAクローニングを行い、種々の方法で結合タンパク質の探索をすると共に、抗ロックス1抗体を作製してロックス1の細胞内発現や局在を確認することを当初の目的とした。これを遂行するための具体的な手順として①ヒトロックス1のcDNAクローニング、②各種発現ベクターの構築、③ロックス1に対する抗体の作製、④酵母ツーハイブリッド法による基質タンパク質の同定、⑤ロックス1とその結合タンパク質に関する細胞生物学的解析を挙げた。さらに補助実験として細胞増殖アッセイ、フォーカスアッセイ、コロニーフォーメーションアッセイ、ヌードマウスへの移植実験、ボイデンチャンバー法などが計画されていた。これらのうち①cDNAクローニングおよびシークエンスは平成23年度にすでに終了している。また平成24年度には②数種類の発現ベクターの作製が行われ、③抗ロックス1抗体が完成している。また平成24年度に実験を開始したin vivoの実験については今現在継続中である。これは癌遺伝子を組み込んだトランスジェニックラットを用いて発癌モデルラットを作製し、これを使用している他、野生株のラットも同時に使用して高濃度酸素環境下における癌の生物学的特質の変化についての検討を行っている。これらと併行して、平成25年度には頭頸部癌組織におけるロックス1の発現について、免疫組織化学的手法を用いて解析すると共に、頭頸部癌細胞株の作製にも着手し始めた。これらは今後の細胞実験に必要となる。
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