研究概要 |
1) 生活習慣(飲酒,喫煙)に関する遺伝子多型 症例および非癌コントロール血液からDNAを抽出し、SNPs解析装置およびRFLP法を用いてアルコール代謝遺伝子多型(ADH1B、ALDH2)、たばこに含まれる有害物質の活性・代謝に関わる遺伝子多型(CYP1A1、GST)の解析を頭頸部癌患者170例、コントロール群68例で行った。この結果、MspI mutation、I462V mutationのVariant alleleを持つ場合、中咽頭癌の発がんリスクが高まることが判明した。 2) HPVウイルス感染 頭頸部癌新鮮凍結標本からDNAを抽出し、頭頸部癌に感染しているHPVを解析した。頭頸部癌154例中,上咽頭33.3%,中咽頭52.3%,下咽頭12.7%,喉頭16.7%,口腔34.6%,鼻副鼻腔30.0%にHPV感染を認めた。HPV型ではHPV-16が約80%を占めた。検出HPVと発癌との関係を明らかにするため、HPVの宿主ゲノムへの組み込み(インテグレーション)、HPV DNA量、oncogeneであるE6,E7の遺伝子発現、を計測した。中咽頭癌では感染ウイルス量は平均10000copy/50ng genomicDNA以上であり、他の癌腫と比較して極めて多いことがわかった。インテグレーションはHPV感染例の約75%にみられた。E6/E7mRNA発現は中咽頭癌では約70%にみられたが、他の癌腫では少なく口腔癌、喉頭癌の少数例でみられた。3年生存率では、中咽頭だけでなく、頭頸部癌全例の検討でもHPV DNA陽性例で有意に無再発生存率が高いことがわかった。 3) 腫瘍の生物学的活性(HIF-1α, GLUT1) HIF-1α,GLUT1は頭頸部癌のほぼ全症例で高いmRNA発現を示していた。免疫染色でも原発巣や計画的頸部郭清術で残存しているリンパ節転移巣では陽性であった。
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