研究課題/領域番号 |
23592539
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
金澤 丈治 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20336374)
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研究分担者 |
市村 恵一 自治医科大学, 医学部, 教授 (00010471)
水上 浩明 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20311938)
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キーワード | 頭頚部癌 / 治療 / アデノ随伴ウイルスベクター / GALR2 |
研究概要 |
頭頸部癌の治療は,現在,外科的治療を中心に放射線治療・化学療法がおこなわれているが十分な治療効果が得られていない.このため新たな治療法の開発が必要である.本研究はこれまで累積してきた基礎知見を基に,GALR2遺伝子を生体内に導入することによる新たな分子標的治療システムを開発することが目的である.これはGALR2が頭頸部癌に対してアポトーシスを誘導することは見出したことが発端である.GALR2は頭頸部癌においてp27, p57, cyclin D1などのいわゆる細胞周期調整蛋白と関連し細胞周期を抑制するとともに強力なアポトーシス誘導作用をもち細胞増殖抑制に関与している.この一方で,臨床応用を考えた場合,Drug Delivery System (DDS)が重要となる.今回の研究では,癌抑制遺伝子のとしての効果が確認されたGALR2を頭頸部癌細胞にアデノ随伴ウイルスベクタ-を用いて導入し,GALR2の治療効果を確認するとともに臨床応用を視野に生体に導入可能なシステムを確立することを目的とする.前年度の研究では,頭頸部癌に対する遺伝子治療に適するAAVベクターを確認するため最近開発された血清型2型から9型までのレポーター遺伝子を含むAAVベクター(rAAV2LacZ-rAAV9LacZ)を作成し遺伝子導入効率を検討した.その結果,頭頸部癌に対しては2型のAAVベクターを用いた場合,最も遺伝子発現効率が良いことを見出した.更に,rAAVGALR2作成に必要なAAVGALR2発現プラスミドを構築し,このウイルスを293細胞に遺伝子導入することにより293細胞内での発現を確認した.今年度は,更に,研究をすすめrAAVGALR2を頭頸部癌に感染させ,免疫組織学的およびウェスタンブロット法で癌細胞内での発現を確認した.また,リガンド刺激を行うことにより細胞数が減少することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GALR2を発現するアデノ随伴ウイルスベクターを作成することができた.また,感染実験も順調であり,遺伝子発現も確認できた.更に,細胞増殖の抑制も確認でき,今後の解析の方向性が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
rAAVGALR2の導入により頭頸部癌に対する治療効果が期待できるが,その機序は,以前の安定細胞株を用いた実験ではp27, p57, cyclin D1などの細胞周期調整蛋白を調整し細胞周期を停止することによると考えられ, 更に,強力なアポトーシス誘導作用が認められる.しかしながら,治療のためには一過性発現による殺細胞効果を検討する必要がある.今回,一過性発現の遺伝子導入システムでも細胞増殖抑制効果が認められたが,更に,未知の作用が存在していることも考えられる.このためAAVベクターにより遺伝子導入した細胞から前回のように蛋白質を抽出し,これらの細胞周期調整蛋白の発現をウエスタンブロット法で確認する.また,GALR2のアポトーシス誘導実験はこれまでの安定発現細胞株を用いた実験でも示されてきたが,この情報伝達経路に関しては十分には理解されていない.このため,今回のような一過性発現の遺伝子導入システムを用いて仔細にGALR2が誘導するアポトーシスの情報伝達系に関しても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,前年度に引き続いて作成したプラスミドからGALR2遺伝子を含むAAVベクターを作成する.AAVベクターの作成には,3種類の大量のプラスミドを作成し,これを大量の293細胞に遺伝子導入し作成する.AAVベクターは培養上清ではなく細胞内に存在するため最初のウイルス液は多量の不純物を含む.このためウイルス液を精製しなければならない.この際に,多くの工程を経ることから,ウイルスの最終収量はわずかなものとなる.したがってウイルス作成には多くの培養液,プラスチック培養皿,牛血清を必要とする.多くの研究費はこの目的に使われる.また,含む遺伝子により,作成法や収量が微妙に異なり,労力を要するためこれに従事する専門家に対する謝礼も計上している.
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