研究課題
頭頸部癌の進行例では新たな治療法の開発が必要である.本研究はこれまで蓄積してきた基礎的知見を基にGALR2遺伝子を生体内に導入することによる新たな分子標的治療システムを開発することが目的である.GALR2は頭頸部癌においては癌抑制遺伝子考えられ,この抑制は頭頸部癌の発癌に関連するものと思われるこの一方で,GALR2の治療用遺伝子としての作用も期待されている.今回の研究では頭頸部癌に対する癌抑制遺伝子としての効果が確認されたGALR2を頭頸部癌細胞にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて導入し,GALR1の治療効果を確認するとともに臨床応用を視野に生体に導入可能なシステムを確立することを目的として研究を行った.AAVベクターの頭頸部癌細胞への遺伝子導入効率の検討:AAVベクターの血清型別に頭頸部癌細胞への感染効率を比較したところAAV2型の感染効率が最も高く,頭頸部癌細胞に対するベクターとしては最適と考えられた.GALR2発現AAVベクターの構築と遺伝子導入,殺細胞効果の検討:GALR2発現AAVベクターを構築し,2種類の頭頸部癌由来の細胞株に導入したところ90%以上の細胞に遺伝子発現を認め,リガンド刺激により強力な殺細胞効果を得た.GALR2発現AAVベクターによる殺細胞効果の発現機序の検討:GALR2を導入後にリガンド刺激を行うとAnnexin-Vおよびsub-G0/G1期の有意な増加が認められ,殺細胞効果はアポトーシスの誘導によるものであることが認められた.更に,情報伝達経路の解析から,GALR2発現AAVベクターによる細胞死は,caspase非依存性にERK1/2を抑制し,アポトーシス促進蛋白であるBimの活性化によりもたらされることが示された.以上の結果は,頭頸部癌遺伝子治療の新たなツールとしてGALR2発現AAVベクターが有用であることを示唆する.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Cancer Sci.
巻: 105 ページ: 72-80
10.1111/cas
Molecular Medicine Reports
巻: in press