研究課題/領域番号 |
23592541
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
三枝 英人 日本医科大学, 医学部, 講師 (70287712)
|
研究分担者 |
中村 毅 日本医科大学, 医学部, 助教 (80421163)
伊藤 滋朗 日本医科大学, 医学部, 助教 (90515975)
下田 健吾 日本医科大学, 医学部, 講師 (30277529)
朝山 健太郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (20373011)
澤谷 篤 日本医科大学, 医学部, 助教 (30449269)
池森 紀夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (00350041)
小町 太郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (10409162)
|
キーワード | 慢性期統合失調症 / 嚥下障害 / 消化管運動 / 栄養管理 / 遅発性ジストニア |
研究概要 |
慢性期統合失調症患者に合併した嚥下障害につき、患者を蓄積し、その原因と嚥下障害発症の病態生理につき検討を進めた。重症例については、入院の上、全身管理を行いつつ治療を行った。患者の背景については、精神神経症状についてはカタレプシー、陰性症状の増悪、陽性症状の出現などを認めた症例もあったが、多くの症例では緊張性は強いが陰性症状中心で精神神経医学的には比較的安定した状態にあった。嚥下時の頸部の反り返りや、喉頭の異常な下降運動などの遅発性ジストニア、頸部から全身に及ぶ遅発性ジスキネジアを呈した症例も半数に認めた。多くの患者で、顔面~頸部~肩帯の筋緊張性が異常な程に亢進と、向精神薬や抗不安薬による消化管機能不全による影響(便秘・腸胃食道逆流)を認めた。消化管運動不全のために呼吸は浅化し、二次的に頸部~顔面筋群の筋緊張性が亢進し、嚥下の不利を呈し、更に体重減少により十二指腸水平部での流れが停滞し、二次的な上腸間膜症候群を呈し、消化管運動の更なる不調へと進展し、筋緊張性亢進の増悪因子になっていると考えられた。これに対して、抗精神薬の調整と共に、消化管運動不全や腸胃食道逆流、便秘に対する治療、更に体重減少が著しい重症例に対しては経鼻空腸栄養チューブ挿入の上で、成分栄養による栄養管理および歩行等の理学療法を行った。その結果、全例において異常な過緊張性が緩和され、遅発性ジストニアやジスキネジアは残存するもその程度が軽減し、嚥下も改善した。経鼻空腸栄養を要した症例では体重増加と共に頸部筋群の筋緊張性が緩和され、嚥下は改善した。慢性期統合失調症に合併した嚥下障害症例の中には治療可能な病態、もしくは合併した治療可能な病態により嚥下障害が発症している可能性が多くあり、全身的な改善、特に水分栄養管理と消化管排泄能をきちんと評価し、管理することがより重要であることが推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者数の蓄積に時間を要したため、その解析が十分進んでいない。上記に記載した以外に、最近になって嚥下能改善術を要した患者もおり、それらの解析も進める必要性がある。患者の総数は必ずも多くは言えないが、一例一例の詳細な解析により重要な知見が得られており、最終年にそれを総合的に分析して、論文として世に発信できるものと思います。
|
今後の研究の推進方策 |
今迄蓄積した症例について、慢性期統合失調症患者に発症する嚥下障害の病態と背景についての傾向を明らかにし、今迄、実際に行った治療とその結果から、具体的な対応と治療方針、更に嚥下障害発症に対する予防という観点まで含んだ報告を行う。具体的には論文として学術誌に報告し、世に発信することを最終目標とする。そのための最終年としたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
患者収集、検査結果の蓄積に予想以上に時間を要し、当初予定していた機器の使用の目途が遅れてしまったことと、予定されていた検査を施行できず、変更を余儀なくされたため、機器の故障による影響です。また、その結果、論文作製が行えず、英文校正や校正費用の出費が行えなかったためです。 故障した機器およびWindonsXPの使用不可に伴うバージョンアップが余儀なくされた機器の購入、論文作製時の英文校正、校正費用、別刷り作製費用に使用する。
|