研究課題
本研究期間に蓄積した症例は10例であった。嚥下障害発症の経過は全例4ヶ月以上を経過し、当初は精神症状と誤認されていた。7例で代替栄養が行われていた。カタレプシーを呈した症例が1例、陰性症状増悪、陽性症状を示した症例が2例存在したが、その他では精神状態は安定していた。向精神薬の過量投与例はなかった。頸部遅発性ジスキネジアを認めた例が2例、嚥下時の遅発性ジストニアを示した症例が3例、食道入口部の異常な開大制限を認めたものが2例、嚥下時の下顎の支持・舌骨/喉頭の挙上運動が不良あった症例が1例、その他5例は頸部の強い筋緊張性を伴い、嚥下時の舌骨・喉頭の挙上運動が制限されていた。食道入口部の異常な開大制限を認めた症例は、輪状咽頭筋の特発性ミオパチー、もう一例は他院で嚥下障害に対するバルーン拡張術が行われた結果、輪状咽頭筋の断裂・瘢痕性狭窄を起こした症例であった。2例とも輪状咽頭筋切断術を行い嚥下は改善した。舌骨/喉頭の挙上不良例は重症筋無力症であり、抗ChE剤内服により改善した。その他の7例は全例で胃排泄能の不良、腸管ガスの残留を認め、体重減少の著しい例では十二指腸水平部が脊椎・腹部大動脈による圧排で通過が不良であった。自覚では便秘を訴える症例が多いとともに、胆汁逆流を含む胃食道逆流を認めた症例も複数存在した。これらでは呼吸は浅く、頸部の強い筋緊張を認めた。筋緊張性亢進の理由は向精神薬の影響、向精神薬による消化管運動への悪影響、消化管運動不良による呼吸の浅化、嚥下障害による生命維持への不安によるものを考えた。これに対して、向精神薬の調整と共に、経鼻空腸栄養による成分栄養もしくは消化態栄養剤による栄養管理、頸部~肩帯の筋緊張を軽減させるよう理学療法を行った。その結果、体重の増加と共に筋緊張は軽減し、全例で経口摂取が可能となった。ジストニア、ジスキネジアも異常運動の振幅が減少し問題なくなった。
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