研究課題
今までの研究において、変異型NBS1導入アデノウイルス(Ad-NBS1)によるNBS1阻害効果、シスプラチン増感効果がin vitroで証明されている。またそのシスプラチン耐性のメカニズムの一機序として、シスプラチン耐性の頭頸部癌細胞株ではシスプラチン刺激に対してp63を介したDNA修復に関わるmRNAおよび蛋白(MRN蛋白)の産生亢進が見られ、シスプラチンによるDNA損傷の修復機能が亢進していること、しかしAd-NBS1投与ではMRN蛋白の発現抑制が起こっているが、その機序としてはp63を介していないことが判明していた。本年度はまず、Ad-NBS1のシスプラチン増感効果の作用機序として、p63以外の経路であるH2AXに着目した。二本鎖DNA障害(DSB)が生じると、その物理的近傍でH2AXのリン酸化が起こりγH2AXとなる。今年度ウエスタンブロットにて、頭頸部癌細胞株に対するシスプラチン投与によりγH2AXが増加していること、コメットアッセイにより、これがDSBの増加に比例していることが判明した。また共役免疫沈降法にて野生型NBS1はγH2AXに結合するが、Ad-NBS1に挿入した変異型NBS1はγH2AXとの結合部位を有さずH2AXのリン酸化を維持できないことが示された。以上よりAd-NBS1投与によりDSB近傍でのγH2AX発現を端緒としたDNA修復機構が働かないことがAd-NBS1によるシスプラチン増感効果のメカニズムと考えられた。もう一つの今年度の目標であったAd-NBS1およびPARP阻害薬併用でのシスプラチン増感についての相乗効果については、Ad-NBS1によるDSB修復阻害およびPARP阻害薬によるSSB修復阻害の併用により統計学的有意差のあるシスプラチン増感における相乗効果が得られた。In vitroで予測された相乗効果がin vivoでも証明された。
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Clin Cancer Res.
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DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-14-0176