研究課題/領域番号 |
23592547
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 航 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (00339160)
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研究分担者 |
野田 航介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90296666)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脈絡膜血管新生 / 加齢黄斑変性 / VEGF選択的スプライシング / SRPK |
研究概要 |
脈絡膜血管新生(choroidal neovascualization, CNV)を伴う滲出型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration, AMD)は、先進国における中途失明の主要な原因となっている。近年、生物学的製剤を用いた治療法の開発によってその治療予後は改善してきているが、現行の製剤には反復投与の必要性や全身あるいは局所合併症のリスクなどがあるため、現在もさらに適切な分子標的の探索が続けられている。 本研究計画では、VEGF選択的スプライシングに関与するSR protein kinase (SRPK)に着目し、その特異的阻害剤SR protein phosphorylation inhibitor (SRPIN)340にCNV形成を抑制する効果があるかについて検討を行っている。 平成23年度はレーザー誘発型CNVモデルマウスに対してSRPIN340を硝子体内投与し、そのCNVサイズを計測するという実験をおこなった。すなわち、レーザー照射によるCNV誘発直後にSRPIN340硝子体内投与群(0.2μM, 2μM, 20μM)と基剤投与群(0.1% DMSO)を作成し、1週間後にそのCNVサイズを測定した。結果として、誘発1週間後のCNVサイズは0.2μM SRPIN340投与群(21741±5237μm2)、2μM SRPIN340投与群(19442±4054μm2)、20μM SRPIN340投与群(16438±2779μm2)となり、基剤投与群(30737±5520μm2)と比較して縮小していた。特に、2μMおよび20μM投与群では統計学的有意差があった。 これらの結果より、SRPIN340は用量依存性にCNV形成を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画はおおむね順調に進展していると自己評価する。理由は以下の通りである。 平成23年度の研究計画は、1)レーザー誘発型CNVモデルマウス作成、2)SRPIN340単独投与によるCNV形成抑制実験の2つであった。1)は本研究計画開始前より予備実験としてシステム確立に着手していたため、比較的順調に安定したCNV誘導が可能となった。また、2)は薬剤あるいは基剤の硝子体内投与時に硝子体出血を生じて評価不能になる例がまれにある以外は特に実験遂行に支障を来す事象もなく、こちらも比較的順調に進行した。 研究開始初年度に「SRPIN340が用量依存性にCNV形成を抑制する」ことを示す結果が得られたことは非常に望ましい状況で、次年度はそのメカニズムを探索する実験に移行できる。これらのことより、進捗状況としては当初の計画目標を達成していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画は、1)SRPIN340によるVEGFアイソフォーム発現変化の確認実験および2)SRPIN340によるVEGF165b発現誘導以外のCNV形成抑制機構の探索である。前年度の実験結果よりCNV形成抑制効果を得るためのSRPIN340至適投与量は20μMと想定されるため、以降の実験は全てその投与量を20μMとしておこなうこととする。1)では、SRPIN340による網膜組織および脈絡膜組織におけるVEGFアイソフォームの発現変化を確認する。すなわち、レーザー非照射眼に対して上記20μMのSRPIN340を硝子体内投与して、投与6時間ならびに24時間後の網膜組織および脈絡膜組織を摘出する。同組織におけるVEGF165およびVEGF165bの発現バランスをRT-PCR法などを用いて、SRPIN340非投与眼のそれと比較検討する。また、同様の実験をレーザー照射(CNV誘発)眼に対しても施行し、実際にSRPIN340によるVEGF165bの発現誘導が眼内でもおこなわれていることを確認する。2)では、SRPIN340投与によって接着分子ICAM-1や炎症性サイトカインTNF-α、IL-6、MCP-1などのCNV形成に関連する炎症関連分子の発現変化が生じるかを確認する。すなわち、レーザー照射およびSRPIN340単独投与24時間後、3日後、7日後に眼球摘出をおこない、RPE-脈絡膜複合体における上記炎症関連分子のmRNAおよび蛋白レベルの発現を非投与群におけるそれらと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の実験計画は、SRPIN340単独投与による脈絡膜新生血管(CNV)形成抑制実験あった。薬剤投与群3群(投与量は0.2μM, 2μM, 20μM)とコントロール群2群(非投与群および0.1%DMSO投与群)の計5群で比較検討を行い、当初各群15匹程度の動物を使用する予定であった。しかしながら、実験が順調に進行して少ない匹数で実験が完了したために、動物および試薬の購入に想定していた予算分が未使用額として発生した。そのため、当該未使用予算を次年度の研究費として有効利用することとした。同繰越分は平成24年度に予定している実験で使用する動物および試薬の購入費用として使用する予定である。
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