研究課題/領域番号 |
23592547
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 航 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (00339160)
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研究分担者 |
野田 航介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90296666)
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キーワード | 滲出型加齢黄斑変性 / 脈絡膜血管新生 / 血管内皮増殖因子 / SR蛋白質リン酸化酵素 |
研究概要 |
本研究計画では、VEGF選択的スプライシングに関与するSR protein kinase (SRPK)に着目し、その特異的阻害剤SR protein phosphorylation inhibitor (SRPIN)340にCNV形成を抑制する効果があるかについて検討をおこなっている。昨年度は、SRPK阻害薬SRPIN340には眼内血管新生に対する抑制効果があるという結果が得られた。そこで、今年度はその機序を解明するため、脈絡膜血管新生(CNV)形成に関与する分子群、すなわち血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor (VEGF)、白血球接着分子intercellular adhesion molecule (ICAM)-1や単球走化因子monocyte chemoattractant protein (MCP)-1などの発現が、同薬剤の投与によって変化するかを検討した。 結果として、SRPIN340によってICAM-1やMCP-1の発現量は減少し、それとともにCNV領域に対するマクロファージ浸潤も低下した。これらの分子に対する抑制作用が、SRPIN340によるCNV抑制機序の一端を担っていると考えられた。しかしながら、興味深いことにVEGFの発現量は総量として低下していた。本検討における仮説は、血管新生誘導型アイソフォームVEGF164aの低下と血管新生誘導型アイソフォームVEGF164bの増加が生じて全体量としては大きな変化が生じないというものであったが、予想と反する結果となった。また、複数回の検討によっても血管新生誘導型アイソフォームVEGF164bを検出することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度交付申請書に記載した6つの検討項目のうち、項目番号5までの検討をすでに終了した。また、これまでの検討結果は2013年5月の国際学会ARVO(Association for Research in Vision and Ophthalmology) Annual Meetingにおいて発表予定である。 以上より、研究計画はおおむね順調に進行していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討において生じた当初計画との乖離は、血管新生誘導型アイソフォームVEGF164bが検出できなかった点である。近年、血管新生誘導型アイソフォームVEGF164bは生体内には存在しないとする報告[PLoS One. 2012;7(5):e35231]もなされているため、SRPIN340によるCNV抑制機序は全く別の経路を介している可能性がある。そのため、今後はSRPIN340ならびに他のSRPK阻害薬による抗血管新生作用をDNAチップなどを用いた網羅的解析で検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のごとく、次年度はSRPIN340ならびに他のSRPK阻害薬による抗血管新生作用をDNAチップなどを用いた網羅的解析で検討する予定である。そのため、次年度の研究費はそれらの解析費用に使用する。
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