研究課題/領域番号 |
23592555
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
臼井 智彦 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80282557)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 角膜 / 血管新生 |
研究概要 |
本年度はまずマウス角膜血管新生モデルにおけるセマフォリン分子群の関与を検討するために、血管新生過程におけるセマフォリンE(SemaE)とその受容体であるplexin D1の発現を検討した。すると血管新生過程においてこれら分子の発現が亢進することが分かった。 次にこれらの分子の血管新生に対する作用を検討するため、角膜血管新生の状況を反映したin vitroの検討が必要と考え、in vitro角膜血管新生モデルの作製に着手した。すでに確立されているヒト皮膚線維芽細胞と培養血管内皮細胞(HUVEC)との共培養系に習い、ヒト培養角膜実質細胞(HCSC)とHUVECの共培養を試みた。まず実験用ヒト強角膜片より角膜実質細胞を単離培養を行った。HCSCとHUVECの共培養を行ったところ、無血清下で弱い血管管腔形成が認められ、この作用は代表的な血管新生促進因子である血管内皮増殖因子(VEGF)添加によって増強した。これにより角膜の環境を反映したin vitroの系を確立した。この系を用いることにより、セマフォリンを含む様々な因子や薬剤の角膜血管新生に対するスクリーニングが可能と考えられた。現在SemaEの角膜血管新生に対する作用について、HCSCとHUVECの共培養で検討を行っている。 なおHCSCとHUVECの共培養ではヒト皮膚線維芽細胞を用いた系よりも血管の管腔形成能は抑制されており、このことから角膜実質細胞下では血管が管腔形成を起こしにくい環境であり、角膜実質細胞が積極的に血管新生抑制因子を産生している可能性を示唆した。そこで、角膜実質細胞と皮膚線維芽細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、そこから検出された因子について現在検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまずマウス角膜血管新生モデルにおけるセマフォリン分子群の発現を検討することであった。血管新生過程においてセマフォリンE(SemaE)とその受容体であるplexin D1の発現が亢進することが分かったため、現在その機能解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在セマフォリンの角膜血管新生に対する機能を評価するため、本年度確立したin vitro角膜血管新生モデルを用いて解析を行っている。これでなんらかの作用が認められれば、さらにin vivoでの解析を予定している。また機能評価がうまく行かなかった場合、他のセマフォリン分子(たとえばセマフォリンAなど)の解析も検討している。 さらに皮膚線維芽細胞と角膜実質の遺伝子プロファイルから検出された因子についての検討を進めることにより、角膜実質が発現する内因性角膜血管新生抑制因子についても探索を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究推進方策に則り、次年度も引き続き検討を行う。実験に用いるのは申請書の通り、主に実験動物や試薬関係であり、大きな変更はない。
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