研究課題/領域番号 |
23592556
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福地 健郎 新潟大学, 医歯学系, 講師 (90240770)
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研究分担者 |
阿部 春樹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40018875)
上田 潤 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10401746)
関 正明 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30617618)
田中 隆之 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (00568545)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 緑内障性視神経症 / 視神経乳頭・篩状板 / 光干渉断層計(OCT) / 前房水 / 腫瘍壊死因子(TNF)-α / 視野障害進行速度 / 長期経過観察 / 原発開放隅角緑内障 |
研究概要 |
(1)基礎研究によるアプローチ:1)緑内障性視神経障害と細胞障害性サイトカインの一つであるTNF-α、酸化ストレスの2項目に関して緑内障眼から前房水を採取し、年齢をマッチングした白内障症例の前房水と比較した.高眼圧を伴う落屑緑内障ではTNF-αの濃度が有意に高く、緑内障による視神経障害の病態に関わっている可能性が考えられた.(2)臨床研究によるアプローチ:1)光干渉断層装置(OCT)によって臨床的に緑内障眼の視神経乳頭部、特に篩状板を観察し、定性的、定量的に評価した.緑内障眼の篩状板は疾患の進行に伴って著明な変化がみられ、特に篩状板孔の拡大が顕著であった.狭義・原発開放隅角緑内障眼(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)を比較すると、NTG眼で篩状板孔が有意に拡大していた.OCTによる視神経乳頭の観察は可能になった物の不完全で、全景を捉えることはできない、篩状板孔の定量に際して明確に孔部と周囲の結合組織部を分離できていない、OCT光が深部まで到達していない、などの問題点があることが明らかとなった.2)5年以上の長期に観察された原発開放隅角緑内障患者を対象として、(1)視野障害の進行速度、(2)視野のクラスタ別進行判定、(3)視野とQuality of Vision(QOL)の相関、などについて検討した.POAGとNTGではPOAGで進行が速やかでより予後が悪いこと、NTGでは上半視野に対して下半視野の障害進行が速やかなことが明らかとなった.また、クラスタ別に視野障害の進行を判定すると5年以上の観察で90%以上の症例でいずれかの領域の視野障害が進行すること、クラスタ別の判定は全体よりも高い感度で、個別点よりもより高い特異度で視野障害の進行を判定できる可能性について示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)基礎研究によるアプローチ:1)緑内障眼の前房水中のサイトカイン、酸化ストレスの解析:サンプルの採取はほぼ終了した.TNF-αに関しては報告済み、また酸化ストレスに関して、白内障患者に関しては報告済み、2)TNF-α注入網膜神経節細胞障害モデル、軸索輸送障害に関する研究:当初の計画に対して進展が遅れている.研究方法の手順として培養細胞を用いたin vitro研究をベースにして、実験動物を用いたin vivo研究の予定だが、現在、培養細胞を作成し、加圧によるサイトカイン、酸化ストレス物質の産生について検証している段階である.理由として網膜神経節細胞、アストロサイトについて質的に再現性ある培養細胞の作成に手間取っている問題が挙げられる.(2)臨床研究によるアプローチ:1)OCTによる篩状板の定性的、定量的研究:ほぼ計画通りの進行状況である.ほぼ計画通りに定量の方法を確定した.すでに学会で発表し、論文を準備中である.緑内障眼の症例収集も終了した.2)長期経過観察患者の視野解析に関する研究:臨床研究として追加した.当施設にはすでに10000を超える患者の視野データベースがあり、最長で24年観察された静的視野検査の結果が残されている.特にPOAGは典型的な慢性疾患であり、その治療・管理は生涯続く.より長期に観察された患者を用いた病態の解析は、疾患の理解、予後解析、長期の治療計画にとって重要である.
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今後の研究の推進方策 |
(1)基礎研究によるアプローチ:1)緑内障眼の前房水中のサイトカイン、酸化ストレスの解析:酸化ストレスに関して、緑内障眼と年齢をマッチングした白内障患者との比較について論文を準備中.同じサンプルを用いてVEGFなど他のサイトカインについての解析を予定している.2)TNF-α注入網膜神経節細胞障害モデル、軸索輸送障害に関する研究:現在の進捗状況から、残りの研究機関でin vivo研究まで到達できるかは不明.少なくとも当初の計画のin vitro実験と成果に付いては到達したい.(2)臨床研究によるアプローチ:1)OCTによる篩状板の定性的、定量的研究:現在、撮影データ(ほぼ300例)に関してデータベースを作成中である.症例を病期毎に分類し、それぞれ定量的解析を行い比較する、緑内障の発症、進展に伴う篩状板の臨床的変化を明らかにする.さらに、視神経炎後視神経萎縮、下垂体腫瘍、視神経低形成などの緑内障とは異なる視神経疾患症例の視神経乳頭を撮影し、緑内障眼と比較し、緑内障の病態への篩状板の関与を明らかにするとともに、視神経症としての他の疾患との違いを明らかにする.2)視野の長期経過解析:すでに行った解析に加えて、視野とQOLの関係、とくにクラスタ別視野との関係を明らかにする.また、特に重要な視野のクラスタ(最も自覚症状に関わるのは中心の直下らしい)の視野障害進行検出と、治療計画への応用について検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に対して、眼圧計は未だ購入していない.昨年度前半に同社より新製品が発売されるとの情報があり、購入を延期した.今年度の研究費の使用は、上記の眼圧計を除いては消耗品と学会・論文発表のための経費のみの予定である.
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