研究課題/領域番号 |
23592556
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福地 健郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90240770)
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研究分担者 |
阿部 春樹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40018875)
上田 潤 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10401746)
関 正明 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30617618)
田中 隆之 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00568545)
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キーワード | 緑内障性視神経症 / 視神経乳頭・篩状板 / 光干渉断層計(OCT) / 網膜神経線維層分離所見 / 酸化ストレス、サイトカイン / 視野障害進行速度 / 視野障害の領域 / Quality of Life (QOL) |
研究概要 |
基礎研究によるアプローチ:緑内障性視神経障害と細胞障害性サイトカインの一つであるTNF-α、酸化ストレスの2項目に関して緑内障眼から前房水を採取、年齢をマッチングした白内障症例の前房水と比較.酸化ストレスに関連する酵素はPOAG、NTG眼では白内障患者と有意な差はなかったが、落屑緑内障患者では有意な低下が認められた. 臨床研究によるアプローチ:従来のSpectral Domain(SD) OCTに加えSwept source(SS) OCTを導入.SS-OCTはSD-OCTに比べより広範囲、高侵達の画像が取得可能である.篩状板の観察に関し、従来のSD-OCTでは篩状板の後端を認識できる症例は限られていたのに対し、SS-OCTではほぼ全例で可能.ただし、乳頭片縁部が厚い症例ではそれより後方の詳細な描出が難しいのは同様であった.SS-OCTを用いて①傍乳頭網膜神経線維層にみられる網膜分離所見②篩状板および傍乳頭脈絡膜萎縮内の欠損所見③黄斑部周囲の網膜神経線維層の観察等について研究を継続中である. 長期観察された原発開放隅角緑内障患者を対象に、視野欠損の領域とQuality of Visionの関連について検討した.予想通り視野の領域によって患者の自覚症状への影響は異なっており、さらに遠見、近見、運転などそれぞれの項目によっても異なっていた.視野の良好眼をbetter eye、悪化眼をworse eyeとした場合すべての項目がbetter eyeに優位であり、上半視野に対して下半視野が強く関与することが明らかとなった.領域としては下半視野傍中心がすべてに関して最も相関が高く、ついで下半周辺視野であった.遠見、近見が概ね同様の結果を示したのに対し、運転はbetter eyeの上半視野で自覚症状との相関が強く、日常生活上の視野領域と異なった視機能を用いている可能性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)基礎研究によるアプローチ:1)緑内障眼の前房水中のサイトカイン、酸化ストレスの解析:サンプルの採取はほぼ終了した.TNF-αに関しては報告済み、また酸化ストレスに関して、緑内障患者の結果について論文を準備中である.2)TNF-α注入網膜神経節細胞障害モデル、軸索輸送障害に関する研究:進展が遅れている.昨年の時点で問題であった網膜神経節細胞、アストロサイトについて質的に再現性ある培養細胞の作成という点については概ね解決のめどが立った.培養細胞を用いたin vitro研究として加圧によるサイトカイン、酸化ストレス物質の産生についてこれから検証する. (2)臨床研究によるアプローチ:1)OCTによる篩状板の定性的、定量的研究:ほぼ計画通りの進行状況である.ほぼ計画通りに定量の方法を確定した.すでに学会で発表し、論文を準備中である.緑内障眼の症例収集も終了した.ただし、SS-OCTを導入したため、従来のSD-OCTのデータとの比較を行っている.新しい装置によりより鮮明で確実は所見が取得可能となるようだと、同じデータを再取得する必要が出る可能性がある. 2)長期経過観察患者の視野解析に関する研究:臨床研究として追加した.強度近視は緑内障発症のリスクファクターとして重要な点はいずれの報告でも共通しているが、進行のリスクファクターか否かが明らかにされていない.これまで行った方法に準じて、強度近視眼の経過眼圧値と進行速度について検討する予定である.さらに、緑内障患者の自覚所見を考えたときに中心視野が最も重要である.中心視野に関してセクター別視野と自覚症状の相関について追加して検討の予定である.
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今後の研究の推進方策 |
(1)基礎研究によるアプローチ:1)緑内障眼の前房水中のサイトカイン、酸化ストレスの解析:酸化ストレスに関して、緑内障眼と年齢をマッチングした白内障患者との比較について論文を準備中.同じサンプルを用いてVEGFなど他のサイトカインについての解析を予定している.2)TNF-α注入網膜神経節細胞障害モデル、軸索輸送障害に関する研究:現在の進捗状況から、残りの研究機関でin vivo研究まで到達できるかは不明.少なくとも当初の計画のin vitro実験と成果に付いては到達したい. (2)臨床研究によるアプローチ:1)OCTによる篩状板の定性的、定量的研究:現在、撮影データ(ほぼ300例)に関してデータベースを作成中である.症例を病期毎に分類し、それぞれ定量的解析を行い比較する、緑内障の発症、進展に伴う篩状板の臨床的変化を明らかにする.さらに、視神経炎後視神経萎縮、下垂体腫瘍、視神経低形成などの緑内障とは異なる視神経疾患症例の視神経乳頭を撮影し、緑内障眼と比較し、緑内障の病態への篩状板の関与を明らかにするとともに、視神経症としての他の疾患との違いを明らかにする. 2)視野の長期経過解析:すでに行った解析に加えて、視野とQOLの関係、とくに中心視野のクラスタ別視野との関係を明らかにする.特に緑内障患者の運転能力に関しては国内外で様々な研究が行われており、特に国内では社会問題としてもクローズアップされている.追加して検討の予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
眼圧計は、患者自身による自己眼圧測定が可能な装置が近日中に発売されるとのアナウンスがあり、それを待って購入の予定 上記の眼圧計を除いて、消耗品、学会・論文発表のための経費として使用する予定である.
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