研究課題/領域番号 |
23592558
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
久保 江理 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10262619)
|
キーワード | トロポミオシン / 後発白内障 / FGF2 / TGFβ2 |
研究概要 |
後発白内障(PCO)の発症に関与する、FGF2とTGFβ2によるトロポミオシン(Tpm1α/2β)の発現変化を、水晶体上皮細胞(LEC)を用いて検討した。通常ではTpm1α/2βの発現が少ない培養マウスLEC(MLEC)とTpm1α/2βの発現が高いペルオキシレドキシン6ノックアウト(Prdx6-/-)MLEC,ヒト不死化LECを使用した。TGFβ2、TGFβ2+FGF2、FGF2含有培地でMLECまたはPrdx6-/- MLECを培養した。プロテインブロット法とリアルタイムPCR 法でTpmと上皮間葉系移行(EMT)マーカーであるα平滑筋アクチン(αSMA)の発現量を測定した。また、形態変化を位相差顕微鏡で撮影した。ラットPCOモデルを作成し、Tpm、FGF2、FGF-R2の局在変化を免疫組織化学染色により観察した。結果:TGFβ2含有培地培養後、2,4日目にTpm1α/2βとαSMAの発現が上昇した。しかしTGFβ2+FGF2含有培地およびbFGF 含有培地培養では2,4日目には、Tpm1α/2βとαSMAの発現が有意に抑制された。TGFβ2 10ng/ml+FGF2 10ng/mL添加培地で培養すると、Tpm1α/2β発現が有意に抑制されると同時に細胞増殖能が有意に低下した。ラットPCOモデルでは、FGF発現が高い赤道部再生水晶体上皮部位で、トロポミオシン発現は減少していた。結論:PCOにおいて、誘導されるTpm1α/2β発現上昇とそれに伴うEMTをbFGFが抑制している可能性が示唆される。PCO発症メカニズム、治療にはTGFβ-Tpmが関与するEMTの制御とFGF2との相互作用も念頭におく必要がある。またTpm発現制御により、ヒトPCO抑制効果が期待される。 現在Tpm1αと2βの、ダブルノックアウトマウスをデザインし作成中であるが、約2年半かかる見込みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットPCOモデルを確立し、これまでの研究の成果も英文論文にて発表した。ノックアウトマウス作成も進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ラットPCOモデルを用い、Tpm発現を抑制する可能性があるTAT-Prdx6点眼、FGF抑制剤投与による予防効果を検討する。 FGFとTGFβ2によるERK, Aktシグナル伝達経路を関するTpm発現制御機構を、培養細胞を用いて解明する。 また、ノックアウトマウス作成を継続して行なっていく予定である。ただし、ダブルノックアウトマウスの作成予定としたため、作成終了予定が来年度以降にならざるをえないことは、仕方がないことである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ラットPCOモデル作成、ノックアウトマウスのための動物関連費用、研究用試薬に使用する。
|