ラット水晶体摘出術後の後嚢混濁(PCO)モデルにおけるPCO抑制効果の検討を行った。ラット水晶体嚢外摘出術時に、FGFレセプター抑制薬(SU5402)とTGFβタイプ1受容体阻害剤(LY 2157299)を前房内投与し、PCOの形態変化を観察した。さらに、このPCOモデルに細胞内に抗酸化タンパクPrdx6蛋白をデリバリー可能にするTAT-Prdx6点眼を、1日1回施行し、PCOの抑制を観察した。 FGFレセプター抑制薬(SU5402)とTGFβタイプ1受容体阻害剤(LY 2157299)の前房内投与においては、PCOの形態変化の違いは観察されなかった。さらに、TAT-Prdx6点眼においても、PCOの抑制はみられなかった。今後投与方法の検討が必要と思われた。 我々の過去のデータより、マウス水晶体上皮細胞(MLEC)は、通常の状態ではTpm1α/2βの発現は微量であるが、TGFβ2投与で発現が上昇し、FGF2により抑制されることがわかっている。MLECのpm発現をTpm2βsiRNAにて抑制すると、TGF-β投与によるTpm発現誘導が抑制された。さらに、上皮間葉系移行(EMT)マーカーであるα平滑筋アクチン(SMA)の発現も抑制された。つまり、MLECのEMTは、Tpmの発現亢進によるものであることが示唆される。 MLECに、miR29c mimics (Tpmを抑制制御するmiRNA)のトランスフェクションにより、Tpm発現が抑制された。さらにFGF2の細胞への投与によりmiR29cが誘導されていた。このmiR29cは、Tpm1α/2β発現を抑制するため、FGF2によるTpm発現抑制は、miR29cにより制御されている可能性がある。 Tpmトランスジェニックマウスの作成は、当初水晶体特異的にヒトTmを発現させるためにαAクリスタリンプロモーターの下流にヒトTpm全長を配置するベクターを作成予定であったが、水晶体上皮細胞への発現は確認できず、水晶体線維細胞にのみ発現することが予備実験結果より、明らかになった。よって、PAX6プロモーターの下流にヒトTpm全長を配置するベクターを作成した。
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