研究課題/領域番号 |
23592561
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
堀田 喜裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90173608)
|
研究分担者 |
高橋 政代 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター網膜再生医療研究チーム, チームリーダー (80252443)
山本 修一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20230550)
近藤 峰生 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80303642)
蓑島 伸生 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (90181966)
中西 啓 浜松医科大学, 医学部附属病院, その他 (20444359)
|
キーワード | 遺伝学 / 網膜色素変性 / 遺伝子変異 |
研究概要 |
網膜色素変性(RP)は、視細胞と網膜色素上皮の機能を原発性、びまん性に障害する遺伝性、進行性の疾患群である。RPの遺伝形式は常染色体優性遺伝(ad)、常染色体劣性遺伝(ar)、X連鎖性遺伝の3種類で見られ、これまでに55個の原因遺伝子が同定されている。本研究は、日本の基幹施設からarRP患者を収集し、arRP原因遺伝子のスクリーニングを行い、日本人RP患者に高頻度に認められる原因遺伝子の同定と日本人固有の遺伝子変異のデータを蓄積し、日本人RP患者を効率よくスクリーニングできる遺伝子診断システムの構築を目的とする。 申請者らは昨年度、日本人arRP患者でEYSに変異が検出される頻度が非常に高く(18%)、100人のarRPから12人にc.4957_4958insA、4人にc.8868C>A変異を同定したことを論文や学会等で報告した。それを踏まえ本年度の研究計画は以下(1)~(4)を計画した。(1)RP患者の診断と検体収集、(2)DNAの調整、(3)arRP原因遺伝子の変異検索、(4)遺伝子変異と表現型の検討。 (1)~(3)については引き続きarRP患者の収集を継続し、更に106 人のarRP患者を収集できた。収集したarRP患者に対してはEYSのc.4957_4958insAとc.8868C>Aの2か所のみをPCRダイレクトシーケンス法で変異探索を行った。また昨年度解析を行いEYSから原因変異を同定できた患者以外のarRP患者に対してUSH2Aの変異探索を開始した。(4)については、昨年度と本年度の解析でEYSより原因変異を両アレルより同定できた10名について個々の臨床像と変異の関連について詳細な検討を行った。 我が国にこれだけ大規模にRP症例を収集して行う原因遺伝子の変異探索は初めてであり、この解析結果はRPを研究する研究者や患者をケアする臨床医にとって重要なデータである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は、日本人arRP患者でEYSに変異が検出される頻度が非常に高く(18%)、100人のarRPから12人にc.4957_4958insA、4人にc.8868C>A変異を同定したことを2012年2月にPLoS ONE誌で報告した。本年度はEYSから原因変異を同定できなかった82人のRP患者についてUSH2Aの変異探索を開始した。更に代表者と分担者らは、引き続きarRP患者の収集を継続し、更に106 人のarRP患者を収集した。収集したarRP患者に対してはc.4957_4958insAとc.8868C>Aの2か所のみをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を行い、arRP患者106人中15人にc.4957_4958insA、5人にc.8868C>A変異を同定した。これら2種の変異は我が国のarRP患者の主要な原因変異の可能性が高いことを明らかとした。また、昨年度と本年度の解析でEYSより原因変異を両アレルより同定できた10名について個々の臨床像と変異の関連について詳細な検討を行った。結果、EYS異常によるRP患者の臨床像は類似しており、多くの患者は10-20代で夜盲を発症し、30代まで比較的良好な視力を保ち、40-50代で視機能が低下していることが分かった。特にc.4957_4958insA変異をホモでもつ患者の臨床像は 他のEYSに変異を持つ患者に比べて臨床像のばらつきが少なかったことを明らかとした。同内容はOphthalmic Genetics誌へ投稿し、来年度公開される予定である。 本年度は研究計画2年目であり、代表者と分担者の協力により、206名の日本人arRP患者を収集し、EYSの変異解析を実行することができた。我が国にこれだけ大規模にRP症例を収集して行う原因遺伝子の変異探索は初めてであり、研究目的の達成度はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画は「現在までの達成度」で記述した点を踏まえて下記 (1)、(2)を中心に行う。 (1)arRP原因遺伝子の変異検索、(2)遺伝子変異と表現型の検討。 本年度から代表者は、EYSから原因変異を同定できなかった82人のarRP患者に対してUSH2Aの全72エキソンをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を開始している。USH2Aはエキソン数が多いため解析に非常に時間と労力がかかり、本年度中に全ての患者の変異探索はできなかった。 次年度は、(1)について82人のarRP患者のUSH2Aの変異探索を終了し、(2)については、USH2Aより原因変異を両アレルより同定できた患者について個々の臨床像と変異の関連について詳細な検討を行い眼科の遺伝学雑誌へ投稿する計画である。 また、EYS、USH2Aから原因変異を同定できなかったarRP患者に対しては、更にRPE65の全エキソンをPCRダイレクトシーケンス法で変異解析を実施する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、PCRダイレクトシーケンス法を用いてarRP原因遺伝子の変異解析を行う。当施設には既に必要な設備は整っているため、主な消耗品は次年度もシーケンシングに用いる試薬である。また研究消耗品の調達に際し、予定額より安価で購入出来たため82,864円の繰越金が生じた。当該繰越金については次年度の研究消耗品に充てる予定である。 また、平成24年度の成果報告を第117回日本眼科学会(東京)、第67回日本臨床眼科学会(横浜)、ARVO 2013 Annual Meeting (シアトル)等で参加発表を行うための旅費として使用する。
|