研究課題/領域番号 |
23592565
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
板谷 正紀 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70283687)
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研究分担者 |
野中 淳之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40532601)
大音 壮太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10511850)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 緑内障 / 補償光学 / 網膜神経線維 |
研究概要 |
AO-SLOにより健常眼網膜の網膜神経線維束の可視化に成功しデータの蓄積を行った。このデータを用い網膜神経線維束の幅と密度の計測を行い、正常眼における網膜神経線維束の幅は眼底の場所により異なること、そしてその幅の眼底における分布の様態を明らかにし報告した(PLoS ONE印刷中)。また、網膜神経線維束の幅が緑内障眼では正常眼と比較して細くなっていることを証明した。これらの知見は、世界で最初の報告である。緑内障では網膜神経節細胞の喪失に伴い網膜神経線維が減少する。このため、従来、光干渉断層計により網膜神経線維層の厚みを計測して、診断に供してきた。緑内障診断の指標としては最も検出力の高い指標として知られる。しかし、網膜神経線維束を観察し計測することはできなかった。網膜神経線維層は神経線維束の集合体であり、網膜神経線維層厚は神経線維束の高さに相当する。すなわち、光干渉断層計では網膜神経線維束の幅を調べることは難しかったのである。本研究は、AO-SLOが、網膜神経線維束の幅を計測可能であることを示したのみならず、緑内障眼で狭くなっていることを示した。これは緑内障患者の早期発見と管理を進歩させるために意義のある知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常眼網膜おとび開放隅角緑内障患者眼におけるAO-SLO撮影と関連するデータの蓄積はほぼ達成した。次に、健常眼と開放隅角緑内障患者眼の比較を行うための網膜神経線維束の密度や幅など形態パラメーターを開発できた。それを用い、健常眼と開放隅角緑内障患者眼の比較を行うことができ、両者における網膜神経線維束の違いを明らかにすることができた。AO-SLOで得られた網膜神経線維束の幅と光干渉断層計により計測した網膜神経線維層厚が相関することを示すことができた。また、AO-SLOで得られた網膜神経線維束の幅と視野との関係も解析することができた。以上より、23年度の中心課題である臨床評価はほぼ達成できた。一方、実験緑内障モデルによる網膜神経線維層および神経線維束の観察は、光干渉断層計と組織病理像の比較は進んでいるが、動物用のAO-SLOプロトタイプの開発が進まず、AO-SLOによる観察はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
動物用AO-SLOプロトタイプを本研究期間で実現する目処が立たなくなっている。しかし、本研究の目的の達成への影響は少ない。研究計画ではもともと動物眼による評価はサブ的位置づけであり、メインである臨床研究により従来誰も成しえなかった新しい知見の発見を行うことができ、この問題を補うにあまりある価値のある展開が可能になった。よって、今後は、患者眼を用いた評価をより充実させる方向へ研究を展開したい。動物眼の組織学的評価は可能であり、患者眼で得られた知見を動物眼の知見により確認することは重要な意義があり、継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者眼の撮影とは継続し、AO-SLOによる開放隅角緑内障診断プログラムの開発へと展開するために、記録媒体や画像用ソフトウエアなどへの使用が見込まれる。患者眼で得られた知見を実験動物モデルの織学的評価により確認する実験のために実験用動物に関する費用が見込まれる。
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