研究課題
前年度までに、補償光学レーザー走査検眼鏡(AO-SLO)により健常眼網膜の網膜神経線維束の形態的特徴を明らかにし、その定量化に成功した(PLoS One. 2012;7(3):e33158)が、本年度はさらに詳細な正常形態の特徴を解析し、緑内障性変化を捉えるための網膜神経線維束の正常形態の基盤知識を形成することができた。網膜神経線維束の正常形態のデータを基に、緑内障眼における網膜神経線維束の障害を観察し、その形態的特徴を詳細に明らかにすることができた(Am J Ophthalmol. 2013;155(5):870-881.e3)。まず、緑内障眼の網膜神経線維束は正常眼に比較して有意に細くなっていることを示した。この網膜神経線維束の狭細化は、検眼鏡的に明らかな神経線維層の異常である神経線維層欠損の中で観察されただけではなく、その外の検眼鏡的に正常に見える部位でも観察された。そして、網膜神経線維束の幅が対応する視野のクラスターのMD値と有意に相関することを示した。この知見は、緑内障患者において網膜神経線維束が視野異常に対応して狭細化していることを世界ではじめて示したものである。緑内障の本態は網膜神経節細胞の死であり、網膜神経線維束は網膜神経節細胞の集合体であるため、その特徴の理解は緑内障の病態と診断において重要である。網膜神経線維束は並列して神経線維層を成している。従来は光干渉断層計により網膜神経線維束の高さに相当する神経線維層を観察し、その厚みを計測し統計学的に異常を検出することが最も緑内障検出力が高い方法とされてきたが、網膜神経線維束の幅は評価できなかった。本研究成果により網膜神経線維束の幅の評価も可能になった。光干渉断層計と同時に用いることで、網膜神経線維束の立体構造を評価する緑内障診断の幕開けになる可能性がある。
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Am J Ophthalmol
巻: 155(5) ページ: 870-81
10.1016/j.ajo.2012.11.016