研究課題
1.狭義加齢黄斑変性症(AMD)200例、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)300例、および正常対照者250名についてDNAの抽出を行ない、遺伝子多型の解析を行った。2.欧米においてAMDとの関連が示されたcompliment component3 (C3)の一塩基多型(SNP)rs2230199(R102G)はアジア人を対象とする追試では関連性を認めなかった。ただ、このSNPはアジア人におけるマイナーアレル頻度が非常に低いことから、関連性の検出力に限界があった可能性を考慮し、我々はC3領域における他のSNPを広く検索した。その結果、イントロン29にあるrs2241394多型が有意に日本人AMDの疾患感受性に対して保護的に関与していることを見出した。3. 酸化LDLなど酸化脂質の細胞内取り込みに関与するCD36のイントロン遺伝子多型との関連が狭義AMDとPCV間で有意に異なることを発見した(CD36多型は狭義AMDとのみ関連し、PCVとは関連なし)。4.Age-related maculopathy susceptibility 2(ARMS2)のrs10490924(A69S)多型が狭義AMDとPCV間で有意に関連が異なることをメタ解析によって証明した。5.ARMS2やCD36のSNPが光線力学療法の視力予後と有意に関連することを見出した。6.理化学研究所との多施設研究に参加し、日本人AMDに特異的と考えられる新たな遺伝子多型TNFRSF10A-LOC389641(rs13278062)とREST-C4orf14-POLR2B-IGFBP7(rs1713985)を同定した。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、AMDの病型によって関連の異なるSNPが複数確認され、また各々が光線力学療法の予後にも関連することが示された。また、以前我々が狭義AMDとPCV間で有意に関連が異なることを発表したエラスチンrs2301995多型に関して複数の追試が行われ、いずれも狭義AMDとPCV間での関連の相違を示唆するものであった。これらの解析を更に進めることによって個別化医療の実現へ着実に前進しているものと考える。
今年度中に解析を行う予定であった遺伝子多型の内、時間的な関係でいくつかの解析が次年度への持ち越しとなった(そのため研究費の一部未使用が生じた)。今後も理論的考察に基づく候補遺伝子アプローチによってAMD病型間の特異的関連遺伝子をさらに探索する。一方で、今年度の多施設研究で得られたゲノムワイド関連解析データを利用して各病型間で関連に差のあるゲノム領域を絞り込むことも試みる。光線力学療法に加え、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法の効果と関連のあるSNPの同定を進めて行く。少数例では既に抗VEGF療法の治療回数と関連のあるSNPを見出したが、更に症例数を増やして確認作業を行う。
研究費は物品明細に記したように、主にリアルタイムPCR・シークエンサー用プローブおよびプライマー、実験試薬、抗体などに使用する。また、研究成果発表のための学会出張用旅費、論文投稿料および英文校正料などに使用する。上記のために本年度の未使用分を平成24年度の研究費と合わせて使用する。
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