研究課題/領域番号 |
23592567
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
本田 茂 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (60283892)
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 遺伝子多型 / 個別化医療 |
研究概要 |
1) 網膜周辺部に比べて黄斑により多く存在し、酸化LDLなど脂質酸化に関与するCD36のイントロン遺伝子多型は典型AMDとポリープ状脈絡膜血管症(PCV)間で関連に有意な違いがあることを証明した。 2) さらにPDTの効果とAMDの表現型や遺伝子多型間の関連を調べた結果、PDTの効果とCD36の遺伝子多型間に有意な関連性があることを証明した。CD36遺伝子多型における非リスクアレルと先に検証したARMS2遺伝子多型における非リスクアレルの同時保持者はと最も高いPDT効果を示した。一方、両遺伝子多型におけるリスクアレル同時保持者は最も低いPDT効果を示した。 3) 臨床分類的にPCVとされる症例群を蛍光眼底造影検査における異常血管網の所見に基づき更に2種類に分類してARMS2、CFH遺伝子多型との関連を調べた結果、ARMS2多型において上記2種類のPCV表現型間で有意な関連の違いが検出された。これは、それまで一つの疾患群として扱われていたPCVが、異なる遺伝的感受性を持つ少なくとも二つ以上の病態の集まりである可能性を示唆しており、先に観察された臨床的疾患群としてのPCVと典型AMD間にみられた遺伝的感受性の違いを説明するものである。 4) 抗VEGF療法に対する典型AMDとPCVの反応性の違いを明らかにし、また抗VEGF療法の1年後治療効果に関わる因子の同定を行ったところ、病型とBody mass indexに有意な関連が見られた。 5) 典型AMDとPCV間における光線力学療法(PDT)の5年後治療効果の違いを検証したところ、両病型間で術前からの視力変化に有意差を認めなかった。これは先に証明したPCVのPDTへの良好な反応性を否定するものとなった。治療前におけるPDT後の予後予測因子の多変量解析では年齢と治療前視力と病巣径が有意な予後予測因子であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のごとく、典型AMDとPCV間、またはPCV内のサブタイプ間において様々な遺伝子多型の関連性の違いが確認されつつあり、またそれらが少なくともPDTに対する感受性の違いにも関連することが明らかになりつつある。特にARMS2とCD36各遺伝子多型の情報は現時点でも治療前情報として応用可能なレベルにあると思われる。また、抗VEGF療法に関連する遺伝子多型も解析が進んでおり、次年度中には全体像が明らかになる見込みである。今後は如何にして簡便に治療前遺伝子診断を行うかという実用面での工夫が試される段階に差し掛かっていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記のごとく、次年度中には抗VEGF療法に関連する遺伝子多型の解析が完了し、AMDに対する各種治療効果と遺伝子多型の関連における全体像が明らかになる見込みである。今後はこれらの遺伝情報をAMD治療に広く活用するべく、如何にして簡便に治療前遺伝子診断を行うかという実用面での工夫が試される段階に差し掛かっていると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は物品明細に記したように、主にリアルタイムPCR・シークエンサー用プローブおよびプライマー、実験試薬、抗体などに使用する。また、研究成果発表のための学会出張用旅費、論文投稿料および英文校正料などに使用する。
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