研究課題/領域番号 |
23592571
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高 知愛 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 特任講師 (70314797)
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研究分担者 |
近間 泰一郎 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (00263765)
園田 康平 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294943)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 眼細胞生物学 |
研究概要 |
本研究は神経麻痺性角膜症の病態の解明と治療法の開発を究極の目的とし、神経細胞がどの様に角膜細胞の分化、あるいは機能に関与し、制御を行っているかを明らかにし、最終的には神経麻痺性角膜症を始めとする角膜上皮創傷における神経細胞、または神経性因子(分泌因子)を同定、そのメカニズムを解明しようするものであります。その為に、まず初年度は株化神経細胞(PC12)を用い、in vitro系で角膜細胞と共培養を試み、その両者の共培養に成功しています。その共培養の方法としては、コラーゲンタイプIビトリゲル膜を用い、その両面に各、神経細胞と角膜細胞を同時に一定期間培養を行い、その後、角膜細胞内の変化をWestern Blot法、RT-PCR, さらに免疫染色による蛋白質、mRNAの発現の解析を行いました。その結果、角膜実質細胞では、神経細胞の存在で、神経細胞が無い時と比べて、実質細胞内で、角膜創傷治癒過程で、あるいは、実質細胞層の再構築に重要な働きをするMMP-1の発現が顕著に増加し、しかも、同時に創傷治癒過程で重要な働きをする炎症性サイトカインIL-6の分泌も増加することを明らかにしました。一方、神経細胞と角膜上皮細胞の共培養では、神経細胞の存在で、角膜上皮細胞の生理的重要な機能であるバリアー機能のための上皮細胞の重層化の促進が見られることを明らかにしました。この様に、この研究で見出した共培養系を応用することで、今後、さらなる生体内の環境に近い系を見出すことが可能になり、それにより、神経麻痺性角膜症や様々な角膜疾患に対する薬物治癒や将来的には今までは不可能と思われた神経細胞の存在下での人工的な再生医療での細胞の取り扱いに対する基本的に重要な生物学的情報を提供し、今後新しい治癒開発への基盤を提供できることに臨床的な意義があると考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は現在までおおむね達成できていると評価できると考えられます。その根拠としては、まず、申請時、初年度の研究計画としてたてられた株化神経細胞 (PC12)と角膜細胞の共培養の確立、さらに解析法がおおむね確立されたと考えられます。すでに、その内容も学会、雑誌などに発表しています。初年度の計画として上げられた神経細胞と角膜上皮細胞との共培養のため、様々な培養条件の工夫(培養液、細胞の密度、培養時間など)の為、計画になかった違う細胞との共培養(条件が見出しやすい細胞)で試し実験をしないといけない状況が生じたために、本来、初年度の計画としてあった、プライマリー神経細胞(三叉神経)と角膜細胞の共培養の結果はまだ見出してはいません。しかし、現在、報告までにはいかないもののその培養を予備実験としてすでに成功しているので、近い将来にその解析と共に神経因子の同定も可能であることと考えられます。この様な実績(学会、投稿論文にての発表による報告、次の実験の為の予備実験の成果など)により、本研究は現在まで計画通り、おおむね達成できていると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進み方としては、まず、初年度に得られた結果を元にさらに共培養系を工夫し、具体的にはin vivoの神経細胞(三叉神経)を用いて、角膜細胞との相互作用を調べていきます。すでに、その条件などは決まりつつあるので、実際にその培養下でどの様な神経細胞の影響を受けているのか、またどの様な因子(神経性因子)が動いているのかを同定し、その因子の刺激、あるいは培地の内に投与など、conditioning mediumとしての活性も調べていきます。さらに、三叉神経細胞の有、無に伴う炎症性サイトカイン、あるいは成長因子などの変化もBio-Plexなどの手法をもちいて明らかにし、角膜創傷治癒の過程で有効に応用できるように解明していきます。また時間的に可能であれば、共培養の条件で酸素の影響も解明していきます。といのは、角膜上皮が外界の大気に接触することは角膜上皮細胞の分化、重層化に重要なことであると考えられると共に神経細胞にとっても酸素の影響は避けられない重要なファクターであるからであります。共培養系で、異なる酸素濃度(1%及び21%)に暴露し、酸素の影響による神経性因子の角膜上皮細胞に対する制御を明確にします。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費の使用計画としては、前年度研究費使用傾向からも明瞭であるように主に消耗品の使用に与えられると考えています。前年度から引き続き、次年度も共培養系を計画している為、その共培養に主に使われるコラーゲンタイプIビトリゲル費が高額のため、申請費の大部分が消耗品に与えたいと考えています。さらに、次年度から研究計画として考えている炎症性サイトカインの解析、または成長因子、神経因子の同定に用いる様々なneuropeptideなど、多数の実験のための消耗品が使用されるため、消耗品費の比重を大きく取らないといけない状況になっています。その他、研究で得られた結果を社会、国民に発信するため、様々な学会での発表(旅費)、論文に仕上げ国際詩に発表(その他;校閲)のため、研究費を申請させて頂たいと考えています。
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