研究概要 |
本研究は神経麻痺性角膜症の病態の解明と治療法の開発を究極の目的とし、神経細胞がどのように角膜細胞の分化、あるいは機能に関与し、制御を行っているかを明らかにしようとする研究であります。本研究の最終的の目標としては神経麻痺性角膜症を始めとする角膜上皮創傷における神経細胞、または神経性因子(分泌因子)ならびに、その因子の働きに影響を及ぼす様々なファクターを同定、そのメカニズムの関連性などを解明しようとするものであります。その為に、先ず、申請初年度までには株化神経細胞(PC12)を用い、in vitro系で角膜細胞と共培養を試み、その両者の共培養に成功し、株化神経細胞と角膜実質細胞との共培養により、角膜実質細胞内で角膜創傷治癒過程に、あるいは、実質細胞層の再構築に重要な働きをするMMP-1の発現が増加し、同時に、創傷治癒過程で重要な働きをする炎症性サイトカインIL-6の分泌も増加することを明らかにしました。一方、角膜上皮細胞との共培養では、神経細胞の存在が角膜上皮細胞の生理的重要な機能であるバリアー機能のための上皮細胞の重層化の促進が見られることを明らかにしました。次に、実際のin vivoでの神経細胞との共培養を試み、前年度までにラットから三叉神経細胞を分離し、角膜上皮細胞との共培養に成功し、三叉神経の有りで、角膜上皮細胞での重層化が顕著に促進されることを見出しました。更に、その三叉神経細胞から分泌される、ニューローペプチドである、Substance P,または、CGRPがその角膜上皮細胞での重層化を促進させる効果はあることを明らかにしました。今後、さらに、新しい治療開発への基盤を提供出来る様にもっと体内に近い状況下での解析の為に角膜を構成する細胞同士の3次元培養を用い、もっと詳細なメカニズムなどを明らかにする必要性があると考えられます。
|