研究課題/領域番号 |
23592578
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
直井 信久 宮崎大学, 医学部, 教授 (50211412)
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研究分担者 |
中馬 秀樹 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20244204)
小澤 摩記 宮崎大学, 医学部, 助教 (00433061)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 網膜 / 色素変性 / 網膜変性 |
研究概要 |
X連鎖性網膜色素変性症の患者ではこれまでにRPGR遺伝子、exon ORF15領域を中心に遺伝子検索を行った。また、先天性網膜分離症のRS-1遺伝子変異を持つ家系を見いだし、その一症例に内境界膜剥離を伴う硝子体手術を行った。それにより網膜分離の形態は著明に改善し、また視力低下が止まるだけでなく、若干の改善をみた。これは遺伝子で確認された網膜分離症で外科的治療が行われ、改善をみた最初の例である。 また網膜機能を大きく減弱させる網膜症として未熟児網膜症に着目し、ベヴァシズマブを投与することにより光凝固を行わなくとも、未熟児網膜症を治癒させることができることを報告した。これは未熟児網膜症の新しい治療法になる可能性が高い。網膜色素変性症では主に視細胞、網膜色素上皮の変性が注目され、網膜内層である網膜神経節細胞や神経線維層はあまり注目されてこなかった。しかし最近の電気生理学的あるいは形態学的研究によって必ずしもそうではなく、網膜内層にも変化が及んでいることが報告されてきている。われわれは昨年に引き続き、電気生理学的な方法のみならず、光干渉断層計(OCT)を使用して網膜内層の層別の形態を解析している。遺伝子情報と合わせて、どのような変異を持つ症例が内層の変性が大きいかを検討してきた。将来人工網膜刺激装置が実用化された時に網膜内層の機能が残っていないと視機能が得られないことが予想されるが、本研究によりその判別ができつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は最も時間が取られる家系調査、および家系内の採血などが順調に進んだため、今後いただいた検体を元に解析するのも予定通りすすむものと考えられる。またRPGRタンパクの機能解析はtwo-hybrid screening methodを用いて行っている最中であるがこれも順調に進んでいるため おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)RPGRタンパクの発現と局在の解析 ポリクロナルとモノクロナルの両方の抗体を用いてRPGRタンパクの発現と細胞内局在を決定する。これには成熟した網膜と、胎児も含めた発達期網膜を用いて比較する。(2)RPGRタンパクと相互干渉を起こし複合体を形成するタンパクの同定と機能の解明 まずyeast two-hybrid strategyを用いてRPGRタンパクと相互干渉を起こすタンパクを見出す。次にGSTプルダウンアッセイとco-immunoprecipitation 分析を用いて相互作用を特定する。またイムノアフィニティ抽出を用いるクロマトグラフィで網膜よりRPGRを含んだ複合物を抽出し、その生化学的性質を調べる。(3)RPGRのconditional null mutationマウスを用いたRPGRタンパクの機能解析 Cre/loxシステムによる視細胞や網膜色素上皮のコンディショナルなノックアウトマウスを用いてRPGRの生物学的な機能を解析する 。(4)臨床患者におけるRPGR遺伝子の分子生物学的、電気生理学的解析 RPGR遺伝子異常をもつ色素変性症はキャリアの近視が強く、表現型にも特徴があるので、標準化された網膜電図、黄斑機能を解析するための黄斑局所網膜電図、多局所網膜電図を組み合わせて、RPGR遺伝子変異がある群と無い群で電気生理学的な差異が見られるかどうかも調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の購入予定であったサーマルサイクラーが中央管理の同機種の機械を借用できたために購入しなくてすんだためその分を繰り越すことが出来、次年度に使用できることになった。次年度は試薬などの薬剤費が計画以上に高額となることが予想されるために、繰り越し分はそれに当てる予定である。
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