研究課題/領域番号 |
23592579
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
吉田 宗徳 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60273447)
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研究分担者 |
小椋 祐一郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70191963)
野崎 実穂 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00295601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 網膜新生血管 / 光凝固 / ショートパルス |
研究概要 |
平成23年度の計画としてまず最初に網膜新生血管モデルを樹立することが挙げられた。計画したモデル動物はoxygen induced retinopathy であり、これは新生児マウスに高酸素負荷をかけ、その後通常の酸素濃度に戻すことで新生血管が自然に発生するモデルである。このモデルは研究の目的に対して非常に優れたモデルであるが、新生児マウスを扱うため、実験動物の入手が不規則であること、何度か実験してみるとマウスが小さく、扱いが難しいことから、実際に光凝固の実験に使用するのは難しいことがわかった。そこで、成体マウスを用いる別の網膜新生血管モデルを使用して、同様の研究ができないかを検討した。検討の結果、成体マウスを用いて網膜新生血管を作成できる新たなモデル(Grant MBらnature med: 8, 607-612, 2002)の作成を試みることとした。実際にこのモデルを作成し、新生血管のスコア化が可能であった。ショートパルス(20ミリ秒)および通常の方法(200ミリ秒)での光凝固の予備実験を行った。C57BL/6マウスを用いて、それぞれの照射方法で光凝固を行うと、通常の方法で約80mWの出力で照射した場合とショートパルスで170mWで照射した場合とでほぼ同等の凝固班が得られた。14日後に摘出した眼球の網膜組織像を検討すると、ショートパルスでは通常の凝固と比べ網膜の内層の構造が保たれていた。また、接線方向への瘢痕形成もショートパルスのほうが通常凝固の70%程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ショートパルスレーザー光凝固と通常のレーザー光凝固の治療効果を比較するために虚血網膜とそこから生じる網膜新生血管モデルを使用する必要がある。使用するモデル動物として当初の研究計画ではoxygen induced retinopathy(OIR)を用いる予定であった。このモデルは未熟児網膜症のモデルとして病態をよく模倣しており、眼に対しても酸素負荷をかけるのみであとは新生血管がほぼ自然発症するという点で非常に優れたモデルである。しかしながら、このモデルでは新生児マウスを使用するために、虚弱であり、眼も非常に小さいという欠点がある。今回、光凝固の操作をするにあたって、眼球が小さく、光凝固が難しいことから、凝固のされ方にややばらつきがみられた。また、実験期間中に死亡するマウスもあり、新生児マウスは入手もやや難しいという問題もあった。そこで、成体マウスを用いる別の網膜新生血管モデルを使用することとした。Grantらの方法で作成した網膜新生血管モデルは成体での網膜新生血管モデルであり、われわれの研究目的にも合うものであることがわかった。以上のような理由で、研究はやや遅れを生じてしまったが、新しいモデルを用いることで、当初の計画とほぼ同様の研究を施行することができると考えている。23年度中にはGrantらの方法による網膜新生血管モデルの作成と、新生血管のスコア化を達成した。また、実際にマウスに対してショートパルスおよび通常のレーザー光凝固を行って、光凝固の効果を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画とは使用するモデルが変更になってしまったが、成体マウスを用いた網膜新生血管モデルを用いて当初の研究計画に沿った研究を行うめどがたったと考えている。網膜新生血管の作成とスコア化はほぼ終了している。24年度はまずモデル動物の網膜に抗VEGF抗体による免疫染色を行い、網膜のどの部位からどの程度のVEGFが産生されているかを確認する。さらに実際の治療効果を比較するため、モデル動物に対し、通常のレーザー光凝固とショートパルスレーザーによる光凝固を行い、新生血管抑制効果を検討する予定である。すなわち、通常 (200ミリ秒)とショートパルス(20ミリ秒)の2種類の照射時間で照射パワー、照射密度を変えた光凝固(波長532nm)を行い、(1)翌日から毎日網膜新生血管スコアによる評価を行う。(2)2日目に硝子体を採取し、VEGF濃度を測定する。(3)14日目に眼球摘出し、組織学的検索を行う。次に光凝固による網膜機能への影響を検討する。対照の正常マウスと網膜新生血管マウスにショートパルスと通常の光凝固を行った後、7日後にERGを測定し、網膜機能を検討する。視神経乳頭から2乳頭径耳側の部分の網膜厚をOCTで経時的に測定する。光凝固8時間後にacridine orange digital fluorography (AODF)を行い、白血球動態を記録する。抗VEGF抗体による免疫染色を行い、VEGF産生を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上の研究計画を実行するために、主として実験動物、試薬、ディスポーザブルの実験器具などの購入に研究費を使用する計画である。これらの研究には数多くの実験動物の購入とその飼育費、抗体などの高価な試薬の購入費が必要であり、消耗品費として多くの研究費を必要とする。また、研究成果を学会発表するための費用として一部の研究費を使用する予定である。
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