研究課題/領域番号 |
23592579
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
吉田 宗徳 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60273447)
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研究分担者 |
小椋 祐一郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70191963)
野崎 実穂 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00295601)
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キーワード | 網膜新生血管 / 光凝固 / ショートパルス |
研究概要 |
平成23年度には網膜新生血管モデルの樹立を試み、当初予定していたoxygen induced retinopathyのモデル作成が、新生児マウスの入手および育成に手間取ったため、新たに成体マウスを用いたモデル(Grant MBらnature med: 8, 607-612, 2002)を用いることとし、モデル作成および新生血管のスコア化を行った。さらに、ショートパルスレーザーと従来法のレーザーで、マウスに光凝固を施行し、網膜への瘢痕のでき方を調べた。 平成24年度は、上記モデルを用いながら、網膜での新生血管形成に最も深くかかわっているといわれているサイトカイン、vascular endothelial growth factor (VEGF)の産生がそれぞれの光凝固によってどの程度抑制されるかを検討した。上記モデル動物の硝子体中には平均2.24±0.33ng/mlのVEGFが検出された。これに対して通常光凝固を行った群ではVEGF濃度は約64%減少していた。一方、ショートパルス群では約40%の減少にとどまった。この理由としてショートパルス群では瘢痕形成が少ないことが考えられた。また、採取した網膜での免疫染色により、網膜内でのVEGFの局在は網膜血管内皮、網膜色素上皮、ミュラー細胞などが主であったが、光凝固後には浸潤したマクロファージと思われる細胞にも局在していた。網膜電図(ERG)の結果b波の振幅は光凝固群で減少していた。特に通常光凝固群では約52%減少していたが、ショートパルス群では減少率は22%程度であった。これはショートパルスレーザーでは網膜内層の障害が少ないことに加え、網膜内での瘢痕形成の割合も約70%にとどまっていることが影響していると思われ、今後の実験ではショートパルスでのレーザー照射数を増やす必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究計画がモデル作成に手間取ったために遅れてしまった。その遅れをこの1年で取り戻すことは困難で、いまだに研究の達成度はやや遅れていると言わざるを得ない。しかし、平成24年度はモデル動物を用いて、眼内でのVEGF産生を検討することができた。また、従来法の光凝固とショートパルスの光凝固それぞれのVEGF産生抑制効果を検討することができた。それによると、どちらの方法で照射を行っても、一定のVEGF抑制効果、新生血管抑制効果はあるが、ショートパルスではやや弱いことがわかった。これは臨床的に感じている印象と共通している。さらに、ERGの検討では通常法と比べてショートパルスのほうが網膜内層障害がかなり低いことが証明された。そこで、今後の課題としてショートパルスでのレーザー照射回数を通常法の1.5-3倍程度とし、それぞれの条件で新生血管抑制、VEGF抑制効果、および網膜障害の程度の評価を行い、目標であるショートパルスレーザーの有効性と安全性、至適照射条件の検討を行いたい。平成24年度単年度で見れば、まずまずの進行があったのではないかと考えているが、さらに気を引き締めて課題に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
先にも述べたように、ショートパルスレーザーは同一照射数では従来法と比べて網膜傷害性は極めて低いものの、新生血管抑制効果も低くなってしまう。これは臨床で感じている印象そのままなので、ショートパルスで照射数を増やして、新生血管抑制作用を十分得られつつ、網膜傷害はなるべく少なくできる至適な条件を決定できるような方向に研究を進めてゆきたい。そこでショートパルスでのレーザー照射回数を従来法の1.5-3倍程度とし、それぞれの新生血管抑制、VEGF抑制効果、および網膜障害の程度の評価を行い、目標であるショートパルスレーザーの有効性と安全性、至適照射条件の検討を行いたい。具体的方法は照射方法を変える以外は平成24年度に行ったものとほぼ同じとする。さらに、最近新生児マウスの育成方法を学ぶ機会を得たため、余力があれば当初計画していたoxygen induced retinopathyのモデルも作成し、今使用しているモデルと結果を比較してみたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様、研究設備等への投資はほとんど必要ないが、実験動物、試薬、ディスポーザブルの実験器具などは高価であり、実験によって多くの消耗品費が必要になるものと考えている。研究費のほとんどは上記物品等の消耗品費として使用予定である。一部の研究費は研究成果の学会発表、論文の投稿等にも用いる予定である。
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