研究概要 |
マクロファージ(MØ)は加齢黄斑変性(AMD)・ぶどう膜炎など後眼炎症の遷延化、角膜移植後の拒絶反応など広範囲の眼疾患動態を左右する。TNF産生MØ亜集団に選択的アポトーシスを誘導し、AMD病態増悪に係る経路を遮断する方法の樹立を目的とし、インフリキシマブを代替できる汎用性に優れた医療技術開発の基盤の確立を意図する。MØに対し独創的な作用特性を有する新規低分子化合物GRA化合物群の作用解析は24年度に報告した。 本年度は23年度に報告したPPARγ アゴニストとは異なる新規HDAC阻害剤OBP化合物について作用点が網膜色素上皮細胞【RPE】にあること、肝の線維化抑制作用を有するSAGはGRA化合物同様MØに作用することを明らかにした。OBP化合物とGRA化合物もしくはSAGとの併用によるRPE/MØ亜集団間の炎症Vicious 回路の遮断の可能性が示唆された。OBPはTNF+/-TGFにより誘導される網膜変性、線維化を抑制することを確認した。 補体活性化因子C3, C5, CFB, 補体活性化抑制因子CFH,CD46, CD55, CD59, Clusterin並びにCTRP6, CTRP5などに対するOBPの作用解析も実施した。同時に、ヒト眼球組織を用いてこれら補体抑制因子の後眼部組織における発現様式を免疫組織染色で解析し、正常人とAMD患者由来の眼球での発現分布の差をRPE, ドルーゼン、黄斑部、辺縁部などで比較し、特徴的な差異を見出した。 ヒトRPE株でのこれら補体抑制因子のOBP化合物による発現制御プロファイルも試験管内で解析した。線維化を誘導する、TNF+/-TGFb刺激下においてヒトRPE株からの危険感知シグナルとして産生される可溶性miRの分子種を同定するとともに産生される炎症性サイトカインとの対応付けを実施し危険感知応答の新側面を明らかにした。
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