研究課題
1.サンプルの収集すでに落屑緑内障症例のゲノムサンプルは現在200例を超えているが、引き続き収集を行っている。落屑緑内障の診断には、熟練した緑内障専門医があたっている。具体的には、視野異常を来している緑内障症例の中で、瞳孔縁や水晶体嚢に付着する落屑物質を確認し、隅角検査での色素高位付着も参考に診断を行い、書面による同意を得た。一方正常コントロール症例については900名以上のゲノムを入手した。コントロールはボランティアを募り、視野(FDT、ハンフリー静的視野)、眼底写真、HRT、GDx、ペンタカム、ビサンテ、3DOCTによる網膜神経線維層厚解析等を施行し、緑内障専門医が診察を行い、複数の緑内障専門医が判定を行った上、緑内障がないと判定した症例から問診上の緑内障家族歴のあるものを除いた症例を厳正に選別した。2. 1000KチップによるSNPジェノタイピング情報の取得本年度は、現有している落屑緑内障症例のジェノタイプ情報の取得ができた約200例と正常約800例の膨大なジェノタイプデータを独自のスーパーコンピュータにて、χ二乗検定を行って、すでに既報されているLOXL1以外に新規遺伝子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
理由:解析に用いる落屑緑内障および正常対照症例は十分な症例が収集できた。ジェノタイプデータについては、現有している落屑緑内障症例を用いたマイクロアレイ実験を開始し、ヒト全ゲノムにわたる900,000個以上の生データの取得を終え、現在はジェノタイプデータに変換を行った。抽出されたデータについて、ジェノタイプおよびアレル頻度に基づくχ二乗検定によりP値を算出し、ケース群で有意な結果を得、新規遺伝子を同定できた。またゲノムワイド関連解析で同定した有意SNPについて再現性の検証を疾患および正常対照で現在行っている。
1. 欧米人データとの比較および統合解析LOXL1を同定した欧米グループが取得したイルミナ社のチップを用いた約300,000SNPについてのジェノタイピングデータをデータベースからダウンロード可能なのでダウンロードし、我々と同一の検定方法により再検定した結果をside-by-sideで多角的に比較する。加えて、我々の取得したデータとの統合解析を試みることで、統計学的な検出力を上げ、日本人と欧米人とで共通するLOXL1以外のSNPの同定も試みる。両者のジェノタイピングシステムが異なるため、両チップに共通するSNPに加えて同一連鎖不平衡ブロックに存在するSNPどうしを抽出するプログラムを構築する。選択されたSNPについて統合解析を行い、上位SNPおよび近傍SNPについて解析を加える。2.ヒト眼組織を用いた発現解析得られたSNPについて関連する遺伝子を割出し、緑内障病型の判別が出来ている臨床サンプルを用いて発現解析を行う。病型は落屑緑内障眼と正常眼圧緑内障を含む広義原発開放隅角緑内障眼と非緑内障眼に分けて考える。サンプルの解析方法として具体的には、前房水ではELISAを行い蛋白量を測定する。水晶体前嚢ではRNAを抽出、cDNAを作成しリアルタイムPCRを行い、mRNA発現量を測定する。線維柱帯は免疫染色にて発現蛋白を確認し、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法を用いRNA、DNAを抽出する。これらの発現解析を行いつつ、同定された遺伝子の発現する蛋白が落屑物質の構成要素であるfibrillin-1, fibulin-2, vitronectin, syndecan, versican, clusterin, LOXL1らとどのように作用するか解析し、落屑緑内障発症機序の解明に迫る。
国内および海外での競合する遺伝子研究の情報収集や、発表のための参加費用として30万円要する。ゲノムデータ解析に必要な補助要員の謝金など60万要する。この補助要員については、緑内障病型診断などに必要な緑内障精密検査にあたる検査員雇用費用40万円、ゲノムデータ解析のデータ整理にあたる事務補助要員雇用費用20万円を想定している。ジェノタイピングの解析に用いる機械のメンテナンス料として20万円要する。発現解析の試薬代として10万円要する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 図書 (2件)
PLoS ONE
巻: 7 ページ: e33389
SpringerPlus
巻: 1 ページ: 41
Br. J. Ophthalmol
巻: 96 ページ: 1148-1149
あたらしい眼科
巻: 29 ページ: 840-843
巻: 29 ページ: 209-210