研究課題/領域番号 |
23592583
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 才一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60316106)
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研究分担者 |
雑賀 司珠也 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40254544)
岡田 由香 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50264891)
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キーワード | 脈絡膜 / 悪性腫瘍 / 上皮間葉系以降 |
研究概要 |
脈絡膜悪性黒色腫症例の摘出眼球は6症例となり、増加した分の症例でパラフィン切片で免疫蛍光染色を行った。使用した一次抗体は、Eカドヘリン、ビメンチン(共にSanta Cruz社)、ファイブロネクチン、IV型コラーゲン、PCNA(共にSouthern Biotechnology社)、ラミニン(Sigma社)、リン酸化Smad2(Cell Signaling社)であった。脈絡膜悪性黒色腫標本で、腫瘍内で比較的分化度の高い領域と紡錘型に伸張した細胞が増殖している比較的未分化な細胞の領域が判別できる標本が4症例であった。1例の脈絡膜悪性黒色腫では、分化型の細胞の集族からなる組織像、1例では、約80%が無色素性の細胞の集族を呈した。分化度の低い部分(細胞が伸張している領域)では、高い領域と比較して、細胞内のビメンチン、細胞間のファイブロネクチンの染色が強い傾向であった。IV型コラーゲンは正常組織の血管や基底膜領域の染色が観察されたが、腫瘍内では、細血管と思われる部分に染色が観察された。分化度の低い胞が繊維芽細胞様の領域に血管様構造が多いようであった。同様にpSmad2とPCNAも共に分化度の低い細胞が繊維芽細胞様の領域で腫瘍細胞の核に一部、染色性を認めた。インテグリンあるいは各種細胞外マトリックス添加群、非添加群の遠沈培養液から増殖に関与する種々のサイトカインのタンパク量をELISAで測定する。両遠沈培養液を一定期間の培養後,細胞の血管新生、リンパ管形成に関与するサイトカインのmRNAを細胞から、タンパクを上清で検討し。さらに上清を添加した血管内皮細胞培養で形成された管腔をCD31の染色により評価した結果、血管新生の亢進がみられ,インテグリンや細胞外マトリックスによるリンパ管形成の影響を免疫染色で陽生所見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
脈絡膜悪性黒色種での眼球摘出に至る症例数に研究が依存するため、研究の進展が予定を遅れている。摘出眼球のパラフィン切片の収集をさらに計っている また、悪性黒色腫細胞COLO679のマウス眼内注入による皮下移植での評価に主眼を置いて研究を試みているが、腫瘍発生まで時間がかかっているために現在、経過観察している。
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今後の研究の推進方策 |
α4、α9インテグリンは種々の細胞外マトリックス成分の受容体として働き、炎症細胞や血管内皮細胞の遊走・増殖に重要な役割が知られている。それらインテグリンの中和抗体とルミカン、オステオポンチン、テネイシンなどの細胞外マトリックスの中和抗体を悪性黒色腫の培養細胞株に投与することにより、その細胞の遊走・増殖能や各種シグナル物質を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ルミカン、オステオポンチン、テネイシンノックアウトおよびワイルドタイプマウスの皮膚下に悪性黒色腫の培養細胞を移植する。皮膚下に作製した腫瘍径を計測し経時的変化を観察する。腫瘍と周辺の組織を摘出し、パラフィン切片を作成し、免疫組織学的検討を行う。 血管形成に対する影響は抗CD31抗体で、リンパ管形成に対する影響は、抗体(Anti-Human Podoplanin Monoclonal Antibody NZ-1)で評価する。腫瘍からtotal RNAを抽出し、real-time RT-PCRで各種遺伝子発現について成長因子関連を中心に検討する。発現パターンに変化が検出されたRNAについては、ジゴキシゲニンを使用したin situ ハイブリダイゼイションで組織内の発現パターンを評価する。各種シグナル関係の評価は、腫瘍のパラフィン切片と腫瘍組織でのreal time RT-PCR法、免疫組織化学とwestern blotで培養細胞の場合と同様に検討する。Apoptosisについては、TUNELとDNAラダーで検討する。 ついで、SKIDマウスに培養細胞株を皮下に移植し、α4、α9インテグリン中和抗体あるいは細胞外マトリックス投与群と非投与群で腫瘍径の計時変化計測を行う。その後の形成された腫瘍の増生の評価、腫瘍細胞の正常評価は上記同様に行う
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