研究課題/領域番号 |
23592584
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30315931)
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研究分担者 |
鶴尾 吉宏 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90207449)
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キーワード | 網膜 / 神経ステロイド |
研究概要 |
神経ステロイドは、中枢神経組織で生合成・代謝されるステロイドホルモンであり、神経伝達物質、神経成長因子などの様々な作用を示して、神経機能を調節する。近年、脳内と同様に、網膜内でも神経ステロイドが合成されることが報告されている。本研究は、網膜において産生される神経ステロイドの一連の代謝経路を、ステロイド代謝酵素の局在と発現動態を統合的に解析することによって、網膜の発生と視機能調節に神経ステロイドがどのように関与しているのかを明らかにすることを目的としている。 まず第一に、正常ラット網膜において、神経ステロイド代謝に関与する酵素が、網膜を構成する6種類の神経細胞とグリア細胞であるミュラー細胞のいずれかの細胞に存在するのかを特定し、さらに発生に伴う発現の変化を解析することを中心に研究を進めた。前年度において、アンドロゲンの合成・代謝に関与する酵素である5β-リダクターゼについて、特異抗体を作製し、網膜における発現を免疫組織学的に検討した結果、成熟ラットではミュラー細胞の突起と細胞体、および視細胞に認められ、また生後1日の未成熟な網膜の神経節細胞層にも陽性反応が認められた。アマクリン細胞にも、生後2週頃に陽性反応が認められ、これらの細胞の陽性反応には、いくつかの発現パターンが認められたことを報告した。本年度においては、活性型アンドロゲンの合成・代謝に関与する酵素である1型および2型5α-リダクターゼについて、特異抗体を作製し、その抗体の特異性を検討した後、網膜における発現を免疫組織学的に検討した。抗体の特異性については、GFP融合タンパクをCOS-1細胞に強制発現させて、ウエスタンブロットおよび、免疫染色により、2種の酵素抗体とも、それぞれに交差反応を示さないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目に当たる本年度は、当初、前年度までに得られたデータを基に、RNAi法によるステロイド代謝酵素の遺伝子解析の手法を確立することを中心に進めることを計画していたが、正常網膜での神経ステロイドの発現動態の解析に研究の大半を費やしてしまったために、やや遅れているといえる。ただし、これまで蓄積されたデータ、および現在進行中の研究を合わせると、次年度での研究の達成は見込めると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、研究を進めていく。これまでに得られたデータを基に、RNAi法によるステロイド代謝酵素の遺伝子解析の研究手法を確立し、正常網膜で網膜形成に対するステロイド代謝酵素の役割、視機能調節にかかる役割について解析を行い、さらに、網膜変性疾患モデル動物を用いた神経ステロイドの発現とその変化についても研究を行い、正常網膜での局在解析で得られた所見と比較対比して、変性疾患モデルにおけるステロイド代謝酵素の生理作用について解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究結果から得られたデータを基にして、RNAi法による神経ステロイド代謝酵素の遺伝子解析を中心に研究を進める。胎生期から生後および成熟期、老齢期に至る発達過程において、網膜形成に対するステロイド代謝酵素の役割、視機能調節にかかる役割について順次解析を行う。
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